ルームサービス 27
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あの器具をアキラに渡したのは緒方だった。
「ホラ、アキラ君、やるよ」
「なんですか?緒方さん」
「進藤宛に棋院に来てたんだとよ。壮絶なラブレターが一緒だ」
困惑するアキラの手に箱を押し付け、緒方は去ってゆく。
「叩き壊すなり、使用するなり、好きにしろよ」
箱の中身を見て、仰天するアキラに緒方が振り返って面白そうに言う。
「進藤はそういうのに向いてるぜ、なんてったって跡が残らない
んだから」
箱から取り出した手紙をあける。
ヒカルにピッタリだと思います。ヒカルがそれをつけたところをそうぞう
してなんどもなんどもイキました。
大きな文字で書いてあり、あわててポケットに入れた。
使うつもりなんてもちろんなかった。
だが、ヒカルがそれを無邪気にそこに押し当ててはしゃぐのを見た時。
アキラの中で何かが少し壊れた。
ふざけていたことなどはわかっていた。
アキラの反応を面白がっていたことも。
だが、あまりに残酷だと思った。自分に対しても、器具を送った誰かに
対しても。たとえ、本人には何もわかっていなくても。
だったらそのツケを払ってもらおうと思った。
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