Linkage 27 - 28


(27)
 緒方の辛辣なセリフに、男は思わず吹き出した。
「勘弁してくれよ!……まったく、ロクでもないことを覚えてるな……。ハイハイ、
オレが奇跡的に教師になれたのは、学年1の秀才緒方精次大先生のノートのおかげで
ございますよ!!」
 2人は顔を見合わせ大声で笑い出したが、周囲の冷ややかな視線に思わず我に返り、
互いに苦笑した。
「これから時間があれば、メシでも食わないか?」
 男の誘いに緒方は頷く。
「そうだな。……ところで、オマエは家で待っている人はいないのか?」
 緒方は皮肉っぽい表情を浮かべ、男に尋ねた。
「生憎、最近振られたばかりでね。結婚のけの字どころか女とも縁のない身分さ。
……で、オマエは?どう見ても善良な家庭人にはほど遠そうだが……。昔から
モテモテだったし、言い寄る女を払い除けるのに苦労してるとでも?」
 緒方は「ハハハ」と笑いながら、前髪を掻き上げた。
「さあ、どうかな……。取り敢えずは、お互いに優雅な独身貴族ってことだろ?」
 男は緒方の返答に憮然とした様子だったが、緒方が足早に出口へと歩き始めると、
慌ててその後を追った。


(28)
 クリスマスが終わったとはいえ、歳末商戦で賑わう休日の新宿では、落ち着いて
話せる飲食店を探すのは容易ではなかった。
2人はなんとか繁華街のおでん屋に、空いたカウンター席を見つけて座り、
喉の渇きを癒そうと早速ビールを注文する。
酒が入り話が弾む中、緒方は煙草の煙を吐き出すと、ふと漏らした。
「最近どうも寝付きが悪くてな……」
 小野は意外そうに緒方を見つめる。
「オマエがか?そこまで神経質なタイプにも見えんが……」
 緒方はムッとした表情で、小野に言い返した。
「オレだって色々あるのさ。好きな碁とはいえ、勝負の世界で生きていくのも
楽じゃないんだぜ……」
「オマエ……その様子だと、毎晩相当飲んでるんじゃないか?」
 緒方は小野の問いかけを無視するかのように、ビールの入ったグラスを一気に空け、
すっかり据わった目で小野を睨みつけた。
「ああ、飲んでるさ!酒でも飲まなきゃ到底寝付けんよ!!」
 小野は呆れ果てた表情で、空になったグラスに勢いよくビールを注ぐ緒方の背中を
軽く叩いて宥める。
「アルコールはマズイぞ、緒方。睡眠導入剤は使わないのか?」
 緒方は「フン」と鼻で笑うと、再度グラスを空にした。
「医者なんか大キライだ!あんなところに薬を貰いに行くなんざ、馬鹿馬鹿しい!!」
 小野は自分より長身の駄々っ子を相手に、ほとほと困り果てた様子だったが、
ふと何事か思い出したのか、カウンターに突っ伏す緒方の肩を揺さぶった。
「……なあ緒方、スマートドラッグは知っているか?」



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