誘惑 第三部 27 - 28


(27)
「やめ…やっ…や…だぁ………」
ゆっくりとヒカルの中にアキラが押し入ってくる。
「んっ…」
自身を全て収めきるとアキラはヒカルの胸に両腕を回して抱きしめる。
それきりアキラは動かない。けれど自分の中にアキラがいるという感覚は、眩暈のような陶酔感
と充足感をヒカルに与えた。背に押し付けられた心臓の音と、内部で脈打つ熱い拍動がヒカルに
ゆっくりと火をつける。内と外からアキラの鼓動を感じていると、それだけで頭がくらくらしてくる。
それなのに、ヒカルを抱きしめたまま動こうとしないアキラに、ヒカルは焦れて名を呼んだ。
「……とう…や…ぁ…」
「ん……」
微かな返答が返ってきて、けれどアキラは身じろぎもせず、ただヒカルの身体に回した腕に力を
こめる。そのはずみでかヒカルの内部でアキラがぐん、と動いた。
「…っ!…」
アキラの腕の中でヒカルが跳ねる。
逃げそうになった腰を抱えこむようにしながら、アキラが更に奥へと自らを進める。
「…っ…とう…やっ…」
呼び声に応えるように、揺するように緩やかにアキラが動き出す。緩やかな動きがもどかしくて、
刺激を求めてヒカルは自分から身体を動かす。
「ん、………あ…ぁ……とぉやぁ…」
「しんどう…」
熱い吐息交じりの呼び声を首筋に感じ、更に柔らかな唇の感触がうなじに降りてきて、ヒカルは
背をふるわせる。
じんわりと追い詰めるようなアキラの動きにヒカルが焦れて身を捩り、首を振る。それに応えるよ
うに次第にアキラの動きが大きく、激しくなる。
「あ、あ…と…や…、とうや、もっと…」


(28)
いつの間にか下半身に降りてきていた手がヒカルに触れた。撫でるようにそっと触れられただけ
なのに身体中にびりびりと電流が走ったような衝撃を感じた。
「や、やあぁっ…!」
優しく、愛おしげに撫でる、その柔らかな刺激に耐え切れない。
「や…ダメ…も……あ、…あ、ああぁ…っ…」
耐え切れずに身を震わせながら、ヒカルは優しい手の中に放ってしまう。と同時に、身体の奥に
断続的な熱い迸りを感じて、更に身をよじらす。膝がかくかくと震えて、いつの間にか自分が高く
腰をかかげ上げていたことに気付く。
背後から回された腕が抱きかかえるように優しくヒカルの身体を下ろしていく。
首筋にかかる荒い息と、背に押し付けられた熱い体温を感じて、ヒカルは大きな息をついた。
耳元で声にならない声が自分の名を囁く。その声と、重なり合う身体の重みと、確かな鼓動が
心地良くて、ヒカルはそのまま朦朧とした意識の中に吸い込まれていった。



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