ルームサービス 27 - 28
(27)
あの器具をアキラに渡したのは緒方だった。
「ホラ、アキラ君、やるよ」
「なんですか?緒方さん」
「進藤宛に棋院に来てたんだとよ。壮絶なラブレターが一緒だ」
困惑するアキラの手に箱を押し付け、緒方は去ってゆく。
「叩き壊すなり、使用するなり、好きにしろよ」
箱の中身を見て、仰天するアキラに緒方が振り返って面白そうに言う。
「進藤はそういうのに向いてるぜ、なんてったって跡が残らない
んだから」
箱から取り出した手紙をあける。
ヒカルにピッタリだと思います。ヒカルがそれをつけたところをそうぞう
してなんどもなんどもイキました。
大きな文字で書いてあり、あわててポケットに入れた。
使うつもりなんてもちろんなかった。
だが、ヒカルがそれを無邪気にそこに押し当ててはしゃぐのを見た時。
アキラの中で何かが少し壊れた。
ふざけていたことなどはわかっていた。
アキラの反応を面白がっていたことも。
だが、あまりに残酷だと思った。自分に対しても、器具を送った誰かに
対しても。たとえ、本人には何もわかっていなくても。
だったらそのツケを払ってもらおうと思った。
(28)
(塔矢、ね・・・塔矢・・・お願いだから・・・・)
頭の上にネクタイでくくられれた両腕を固定され、ベッドにねかされた白い
裸体、小さな頭をのけぞらせて枕にすりつけ、時折左右にふり必死で快楽をこ
らえている。薄く汗をかいた肌にアキラが触れると懸命にすりつけて来る。わ
ざとはずすと、泣き出しそうになる表情がたまらなくかわいらしくて何度もキ
スをした。
それはすばらしい光景だった。
ずっと見ていたいと思った。
花は散らすより愛でるものなのだと妙に納得した。
写真にとっておきたいと思ったので写真にとった。
トイレに行って、手を洗ったあと、ポケットの中の手紙に気が付いた。
開いて読む。ラブレターとは名ばかりの妄想の羅列。
だが、その文章にはまがいのない熱がこめられていて、それと
携帯の写真を見ながら。アキラは抜いた。
手に残った白い粘液を見て、情けなさに少し笑った。
手紙でそれを拭き、ちぎってトイレに流した。
(よかったな、犬)
手紙は流れてしまったが、その主が送った器具は、本当にヒカルを
犯し、甘い喘ぎをあげさせている。
手紙の主が知ったら狂喜乱舞するだろうか。
(・・・・・・ボクに嫉妬するだけか)
ヒカルの姿に同じような妄想を抱いている犬は一体どれくらいいるのだろう。
(犬)
鏡の中の自分をみる。凶暴な顔をしていた。
(お前たちの妄想をボクが本当にしてやろうか?)
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