闇の傀儡師 27 - 29
(27)
「進藤…」
そうしながらアキラも少しずつ息を荒げ、来ていたシャツの首元を緩める。
ヒカルの胸を吸いながら、アキラはいつしかヒカルの体に覆いかぶさるようにして
強くヒカルを抱きしめていた。
「戻って来い、戻って来てくれ、進藤…!」
明らかにヒカルが苦しさからではない吐息を漏らし始めたのを見て、男は小さく舌打ちをした。
「あまり手酷い事はしないつもりだったが…仕方がないようだね。」
その男の言葉にヒカルがハッとして目を開けると、今度は体の上で揺れていたロウソクの炎が
ゆっくりと下半身の方に動くのが見えた。
ヒカルの両足は左右に大きく開かれて拘束されている。
再びヒカルの心は強い恐怖に囚われてしまった。
「い、いやだーーーーっ!」
一滴一滴、熱いロウの雫はヒカルの体の中心にそってみぞおちから腹部、さらにその下へと
落下地点を移して行った。
やがてその落下地点がヒカルのもっとも敏感な部分と重なった。
「ぐああああーーっ!」
ヒカルの体が上のアキラの体を持ち上げる程に反り上がった。
「し、進藤!?」
「あ、あ、熱い、死んじゃう…、助けて、塔矢…!!」
ヒカルが無意識に激しく腰を振らすのを見て、アキラは状況を理解し、決意してヒカルの
下肢からジャージのズボンと下着を取り払った。
そしてあまりの痛々しい様にショックと怒りで一瞬目を閉じた。
(28)
まだ未発達なヒカルのその部分とその周辺がやはり真っ赤に腫れ上がって、
ひくひくと喘ぐように震えている。
アキラはひと呼吸つくと、決意したようにその部分に顔を寄せて行った。
床の上でヒカルは放心状態で横たわっていた。両腕は後ろ手に縛り直され、両足の拘束は
解かれたものの、もはやわずかも動く気力をヒカルは失っていた。
ロウを落とされた局部が燃え上がるように激しく疼く。
ヒカルはこのまま自分は気が狂っていくのかと思った。むしろその方がましなのかとさえ
思えた。
するとまた、その部分にふわりと柔らかい何かが触れ、最初激しく痛む箇所に何かが
擦れる事に反射的に怯えたヒカルだったが、すぐにそれがアキラの行為だと気付いた。
「…と…おや…」
柔らかく温かなそれはヒカル自身をすっぽりと包み込み、残忍な衝撃の余韻を薄れさせ、
代りに甘い何とも言えない感触を与えてくれた。
それは性的なものとは違う、ただひたむきにヒカルを苦痛から救おうとしているアキラの
願いに思えた。
自分は一体向こうに戻れるのだろうか。塔矢の居る世界に。
「塔矢ア…」
両手は使えなかったが、心の中でヒカルはアキラに向かって両手を差し出した。
ここへ来る直前に真剣な目で自分の事を見つめ、励ましてくれたアキラの顔が浮かんだ。
その時体の中心に熱いものが高まり、刺激を受けている先端に向けて走り抜けようとしかけた。
ベッドの上で行為を続けるアキラの背中側で、青ざめた顔で空ろな表情で横たわっていた
ヒカルの目が、ゆっくりと焦点を合わせ始めた。
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背中に触れる冷たい床の感触と、自分のベッドのマットの感触が混じりあうのを感じ、
ようやくヒカルは覚醒出来るかと思った。
その時、カシャン、と冷たい金属が足首に触れた。
「えっ…?」
しばらく傍に居なかった男が戻って来て、何かをヒカルの足首に取り付けている。
ぼんやりした意識から、再びここへ繋がれてしまった事にヒカルは唇を噛んだ。
両足首にはそれぞれ金属の輪がはめられ、その輪には鎖がついていて、その先に
重りのような丸い球体がついていた。
重り?何の為に…?
「やれやれ、少し準備に手間取ってしまった。もう少しで間に合わなくなるところだった…。
ヒカルくん、あれをご覧。」
そう言って男の手がヒカルの上半身を抱き起こす。
そしてヒカルはそこに信じられない物を見た。
それは跳び箱程の二倍程の大きさの木で出来た台だった。上が尖った
いわゆる「三角木馬」というもので、ヒカルもそれは何か処罰や拷問道具として
使われるものだと何かの本で見た事があった。
ヒカルの顔から血の気が引き、カタカタと全身が震えた。
「…い…やだ…」
そう小さくやっとの思いで声を出した。
「そうだね、ヒカルくん。私もこんな事はしたくない。だから君に心に強く念じて欲しいんだ。
ずっと、ここに私と一緒に居たい、と。向こうの世界には戻りたくないとね。
そうすれば一生ここで、充分君を可愛がってあげる…。素敵な服を着て、いつまでも君の美しさを
保ってあげるよ…。君は私にとって究極の美の女神なのだからね…、ヒカルくん。」
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