無題 第2部 28


(28)
「…わからないんだ。ボクは…ボクが何を思っているかも、自分がどうしたいのかも、
何も…なにも、わからないんだ。」
泣き濡れた瞳が、すがるように緒方を見上げる。
だが緒方はその目を正視する事ができなかった。
「アキラ…そんな目で、オレを見るな。」
目を逸らして緒方は苦しげに言った。
アキラが自分を見ている。その視線を感じながら、彼の方を見る事ができない。
沈黙に耐え切れず、絞るような声で、緒方は言った。
「もう、ここへは来るな。そんな目でオレを見るな。でないとオレは…オレはまた、オマエに
何をするかわからない。」
それにもアキラは何も答えない。緒方はその沈黙に、アキラの抗議の意思を感じた。
だが、更に長い沈黙の後、もう一度、緒方は言った。
「もう、帰れ。そして、もうここへは来るな。」
視線を落とし、床を見詰めて、低い声でアキラが言った。
「…何をするかわからないって…そうしたいなら、すればいい。」



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!