Shangri-La 28


(28)
「塔矢って、あったかいのな…」
ベッドの中でヒカルは、アキラの胸に顔を埋めた。
きゅっとヒカルを抱き締めながら、何とか寝つかせようと、アキラは話題を探す。
会話するのではなくて、一方的に話すことが出来るような、
子供の頃枕元で聞いた子守歌とか、昔話とか、そんなようなもので
余計なことを考えさせない何か……
結局、以前ヒカルの腕の中で見た夢の話から始めた。
南の国の、青くて綺麗な空と海――浜辺の景色や海の様子、穏やかな気候。
いつか二人で行ったら一緒にしてみたい、いろいろなこと――
思いつくままに夢語りをしている間に、ヒカルは寝息を立てていた。
アキラはヒカルの寝顔を確かめると、ぎゅっと目をつぶって
ヒカルの寝息に引きずられて自分にも睡魔が襲い来るのを待った。

ヒカルは、最近の習慣どおり、短く浅い眠りから覚めた。
うっすらと開いた目に見慣れた暗い天井が映り、すぐ隣でアキラが眠っている。
病院にいるはずなのに、あれ?と一瞬うろたえた。
アキラを起こさないよう、そっとベッドを降りて階下へと向かうと
水を一口飲んで軽く溜息をつき、ぼんやりと暗闇を見つめ、
時間をさかのぼり記憶を辿る。
先刻までは、頭の中は夜の森の中にいるようだった。
頭はすっきりと冴えているようで、でもいざ何か考えようとすると
濃い霧で覆われて足下すら見えず、不安に胸が詰まった。
なのに今は。
頭はぼうっとして重たいのに、思考の引き出しは滅茶滅茶に開いていて
沢山のとりとめもない事が、その全部の中から溢れて
澱みなく止めどなく、まるで洪水のように頭の中を流れていく。
その洪水は、不思議とヒカルの不安を押し流してしまっていた。



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