白と黒の宴2 28


(28)
「緒方さん…」
震える唇でその名を呼んだ。心音が自分の中で大きく響くのが聞こえる。
寝ていないせいか、足下が波打つように揺れていた。
「北斗杯のメンバーが決まったらしいね。」
緒方は脇の廊下の隅に設置してある灰皿に煙草を押し付ける。
「なかなか面白い面子のようだな。どんな戦いになるか、楽しみにしているよ。」
その緒方の言葉には強い皮肉が込められているような気がした。
緒方は、自分と社の事に気付いているのだ。
北斗杯代表選考会で社がこっちに来ている以上何らかの行動を起こす事は緒方にも予測出来たはずだ。
「…昨日来てくださればよかったのに…。」
そしたら社につき合うはめにならなくて済んだかもしれないと思うとつい緒方が恨めしくなる。
「これでも結構忙しい身なのでね。」
冷たいとも言える言い放し方で、緒方はアキラに背を向けて階段を下りて行く。
突然、アキラはどうしようもない心細さに包まれた。理屈では無かった。
緒方に見放されたくなかった。
「…緒方さん、」
アキラが呼び掛ける。が、緒方は聞こえないかのように遠去かっていく。
「…緒方さん…!」
今にも泣き出しそうな、悲痛なほどのアキラのか細い声の呼び掛けにようやく緒方は
立ち止まり、ゆっくりと振り返る。
「…来なさい。」
氷のような感情のない瞳だった。だが吸い寄せられるようにアキラは緒方に近付いて行った。



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