失着点・龍界編 28


(28)
「失礼ですが、あなたはもしや、塔矢アキラ3段では…」
「はい、そうですが。」
囁くような小声の席亭の問いに対しアキラは相手の目を真直ぐに見て答えた。
「ぜひとも指導後をお願い出来ませんでしょうか。お礼は出来るだけの
事を…」
「…申し訳ないのですが、今日は時間がないので…。」
「そうですか…残念ですね。それでは、サインだけでも頂けませんか。」
「それは…かまいませんが。」
「事務所に色紙と机がありますので、携帯も探して直ぐに持って
行きます。こちらへ…。」
ビル内の別の事務所の部屋に向かう為に席亭についてアキラが「龍山」の
ドアを出るのと入れ違いに、三谷が入って来た。
三谷はアキラの姿に目を見張り一瞬息を飲む。アキラは三谷の事は
全然覚えていないようだった。ただチラリと三谷を見て、自分と同じ年位の
人が来ているには来ているんだな、と感じただけだった。そのアキラと
席亭に続いて数人の男が静かに立ち上がり出て行った。
(なぜ…塔矢アキラが…?)
三谷は入り口の所で呆然と立ち止まったままアキラが向かった方を見てい
たが、カウンターの若い男に腕を掴まれ、店の中に連れ込まれた。
「遅かったじゃねえか。沢淵さんがお冠だよ。お前が目当ての
客が来ているらしい。」



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