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(28)
「おい。楽しませてくれるじゃないか」
アキラの冷たい視線に気おされている男を押しのけて背後の、肩の盛り上がったい首気味の大柄な男が進み出た。
「何でもするといったな?今に後悔するぜ」
「そちらこそ」
「なに?」
予想だにしない言葉に男はたじろいだ。
「ボクを後悔させないで下さい」
口元を拭きながら、アキラは泰然と言い放った。
男は顔を赤らめて、視線を泳がせながら言葉を捜す風だった。
「そうか。−そうかよ!!期待にこたえてやるぜ」
上ずった声だった。完全に血が上っているのがわかった。
「満足させてやるよ。次にしてやることはこっちが決める。泣いて見せるなら今だぜ」

(・・・一体どうしたんだ!?)
ヒカルは、唖然とアキラの信じられない言動を見守っていた。
(あれじゃ自分からひどい目に合わせろといってるようなもんじゃないか?
搭矢、オマエ、殺されるぞ!)
だが、男たちがいまやヒカルには完全に興味を失い、凶暴な欲望のすべてをアキラに向けているのも事実だった。
言葉を発するまもなく、アキラは地面にねじ伏せられ、制服の胸のボタンが飛んだ。
白い肩が見えた。
その肩に誰かが顔を寄せたのも。
「あう!」
短い悲鳴。
「獲物には印をつけないとな」
下卑た笑いのむこうで、ざんばらの髪の中のアキラの瞳に涙がにじんでいるのが見える。
肩からはうっすらと血が流れていた。
引き結んだ口もとが静かに、ヒカルに向かってだけ動いていた。
(ニ・ゲ・ロ)



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