トーヤアキラの一日 28 - 29
(28)
やがてアキラは顔を小刻みに動かして、鼻をこすり合わせながら舌を出して、ヒカルの唇を
嘗め回し始めた。
「フフ、進藤はレモンの味がして美味しいね」
「バ、バカ。さっきCCレモン飲んだからだよ。・・・塔矢の鼻は冷たいな・・・」
と言ってから、ハッとしたように顔を離してヒカルは聞く
「お前どの位オレを待ってたんだ?手も冷たかったし、体が冷えてるんじゃないのか?」
アキラは首を横に振りながら微笑んで、
「じゃあ、もっと暖めてよ」
と言い、再びヒカルの唇を捕らえる。
今度はゆっくりと味わうように、唇を重ねながら舌先で上唇、下唇、歯列を嘗め回す。
徐々に舌を進入させると、ヒカルが自分の舌を静かにアキラの舌に絡めて来る。
その舌の上下左右、上顎の味を確認する。そして舌を絡ませたまま、角度を何度も変えて
思う存分ヒカルの口腔内を味わい尽くす。
ヒカルの背中に回していた右手を動かしてヒカルの髪に触れた。柔らかい髪をかき回し
ながら頭を押さえ、より深く舌を侵入させると「んっっ」とヒカルの喉が鳴る。
次に絡めたヒカルの舌を思い切り吸い上げると、ヒカルは舌を持って行かれまいとして
顔を離そうとする。それを許さず、頭に当てた手に力を入れ、吸い続ける。アキラの
吸引力は強く、ヒカルは抗い切れずにアキラの口の中に舌を持って行かれた。
ヒカルはアキラの口の中で遠慮がちにチョロチョロと舌を動かしたが、すぐに引っ込めて
しまった。その時に「グチュッ」と言う音がして、二人は顔を離して微笑みあう。
アキラはヒカルの目を食い入るように見詰めて再び言う。
「進藤。キミの事が好きだ」
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アキラはそっと体を離すとヒカルの右手を両手で取って、愛しそうに撫でた。
「フフ、前にキミの右手にこうして触れた時の事を覚えてる?」
「えっ?オレの手に?」
「そう、キミと二回目に会った時だよ。さっきの地下鉄の入り口の前で」
「あっ!」
「あの時と比べると随分大きくなっているけど、柔らかさは変わらないね」
そう言うと、大事な物をいとおしむ様に頬擦りした後、ヒカルの手に口付ける。
手の甲から指先に唇を這わせながら何度も口付けて、最後には人差し指と中指を咥え
込んだ。アキラは軽く目を瞑って、ピチャピチャと音を立てて二本の指を嘗め回す。
舌を動かしながら薄目を開けて、ヒカルのあっけにとられている顔を見ると、さらに
グチョグチョと音をたてて、しゃぶるように夢中で指を吸い始めた。そうして、
気が済むまで指を味わったアキラは、ヒカルの指を口から離すと濡れた指を自分の頬で
拭きながら囁く様にしみじみと言う。
「この指でキミは碁石を打っているんだね・・・」
ヒカルはアキラの顔を見詰めたまま呆然としていた。
アキラはヒカルの手を下ろして、表情を元に戻すと、
「さ、何か暖かいものでも飲もう。この間払いそびれたから、今日はボクが奢るよ」
と言って歩きだす。
「う、うん、そうだな。」
ヒカルもアキラにピッタリと寄り添って歩き出した。
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