日記 28 - 30


(28)
 あの後、アキラとヒカルは、再び、ベッドの上で抱き合った。


 今、ヒカルは、アキラの胸に顔を押しつけるようにして、目を閉じていた。
「何かあったの?」
塔矢の問いに、ヒカルは黙って首を振った。
 ウソだと言うことはわかっている。しかし、問いつめるような真似はしない。出来ない。
ヒカルは、自分の心に何でもしまう質なので、悩みがあっても、なかなかそれをうち明けたりしない。
それが、アキラにとっての心配の種だった。
――――進藤は秘密をたくさん持っている……
「sai」のことにしてもそうだし、緒方とのつきあいもどういうものなのか、今一、
よくわからない。今日のことにしても、そうだ。
「ねえ…」
アキラがもう一度訊ねようと、ヒカルを見ると、ヒカルは、もう寝息を立てていた。
 アキラは、ヒカルを抱き寄せると、自分も目を閉じた。


(29)
 珍しく、アキラより先に目が覚めた。ヒカルは、隣で眠っているアキラの顔を覗き込んだ。
切れ長の目は今は瞼に覆われている。きりっとした濃い眉、整った鼻梁、薄い唇……。
ヒカルは、アキラの額にかかるサラサラとした前髪を梳いた。
「塔矢って、ホント奇麗な顔してるよな…顔だけじゃなくて、頭もいいし、何より、
 めちゃくちゃ、碁が強え……何で、オレ何かのこと好きなんだろ?」
ヒカルは、ことあるごとに自分に「好きだ」と恋心を語るアキラを思い出す。
「お前が何でオレを好きなのかわかんないけど……オレも好きだからな…」
 ヒカルは、アキラの額にチュッと軽くキスをした。
「理由なんて関係ないだろ?好きなものは好きなんだ。」
アキラが、目を閉じたまま言った。
「なんだよ…起きてたのかよ…人が悪りぃな…」
照れ隠しに、拗ねた口調でふくれて見せた。
 アキラが起きあがって、ヒカルの目線に自分を合わせた。
「君は、ボクのどこが好き?」
そうアキラに問い返されて、ヒカルは答えに詰まった。
 碁が強いから…。勝負に対する姿勢が好き…。いろいろ有りそうだが、改めて考えると、
どれも正しくて、どれも違うような気がする。
「ね?わかっただろ?」
アキラは、笑って、ベッドから降りた。


(30)
 アキラは、ヒカルに着替えを手渡してくれた。Tシャツとジーンズ。アキラのものではない。
ヒカルのためにアキラが、わざわざ用意していたものだ。
「塔矢…ゴメン…」
いつも、アキラに迷惑をかけている。泊まることはわかっていたのだから、着替えぐらい
持って出ればよかった。アキラに逢うことばかり考えていたので、そこまで気がまわらなかった。
「いいんだ。ボクがこうしたいんだ。」
 服に袖を通しながら、アキラはヒカルに笑いかけた。
「どうする?コンビニで買ってくる?それとも食べに出る?」
「ん…と…外に行こーぜ!」
 アキラにそう返事をして、ヒカルは辺りを見回した。自分の鞄を探しているのだ。
――――――どこやったっけ?家に入ってすぐに、塔矢にキスされて…それから…
ヒカルは玄関へ走った。思った通り、上がり口に投げるように、置かれていた。
 無造作に持ち上げると、開いていた鞄の口から、中身が零れ出た。
「あ――――ぁ……あれ?」
ヒカルは、床にばらまかれた物の中から、一冊のノートを拾い上げた。
「これ…持って来ちゃったんだ…」
そう言えば、塔矢からの電話を告げられた時、慌てて鞄の中に押し込んだ。
 ヒカルは、暫く、ノートに描かれた清楚な花に見入っていた。



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