ルームサービス 28 - 32


(28)
(塔矢、ね・・・塔矢・・・お願いだから・・・・)
頭の上にネクタイでくくられれた両腕を固定され、ベッドにねかされた白い
裸体、小さな頭をのけぞらせて枕にすりつけ、時折左右にふり必死で快楽をこ
らえている。薄く汗をかいた肌にアキラが触れると懸命にすりつけて来る。わ
ざとはずすと、泣き出しそうになる表情がたまらなくかわいらしくて何度もキ
スをした。
それはすばらしい光景だった。
ずっと見ていたいと思った。
花は散らすより愛でるものなのだと妙に納得した。
写真にとっておきたいと思ったので写真にとった。
トイレに行って、手を洗ったあと、ポケットの中の手紙に気が付いた。
開いて読む。ラブレターとは名ばかりの妄想の羅列。
だが、その文章にはまがいのない熱がこめられていて、それと
携帯の写真を見ながら。アキラは抜いた。
手に残った白い粘液を見て、情けなさに少し笑った。
手紙でそれを拭き、ちぎってトイレに流した。
(よかったな、犬)
手紙は流れてしまったが、その主が送った器具は、本当にヒカルを
犯し、甘い喘ぎをあげさせている。
手紙の主が知ったら狂喜乱舞するだろうか。
(・・・・・・ボクに嫉妬するだけか)
ヒカルの姿に同じような妄想を抱いている犬は一体どれくらいいるのだろう。
(犬)
鏡の中の自分をみる。凶暴な顔をしていた。
(お前たちの妄想をボクが本当にしてやろうか?)


(29)
 「進藤、後ろむいて、お尻、洗うから」
シャワーの湯に身を委ねていたヒカルがうっすらと目を開く。
「いた・・・いから、ゆっくり・・・うっ」
つらそうにうつぶせになった背中を震わせる。
だが、シャワーの水流の向きがかわり、奥に水が入った時。
「あう・・・ん」
声に微妙なリズムがあった。入り口近くはつらいらしいが、奥は
そうでもないらしい。
「もっとお尻あげて」
素直にかかげられたかわらいらしいふたつのまるみの中心をアキラは
注意深くあらう。
「う・・んっ・・・うあっん」
二人だけの浴室に声が響く。
アキラがシャワーを置くと、ヒカルがけだるげだが上気している顔をアキ
ラの方へむけた。


(30)
「終わった?」
「うん」
手をアキラの方へさしだした。
「起こして」
アキラは言われた通りにヒカルの体を起こした。
起き上がったヒカルがアキラの裸の胸に頭をすりつけてくる。
自然にアキラはヒカルの背に手を回した。
浴室の扉が開く音がした。
(犬か・・)
せっかくいい雰囲気なのに、と残念に思ったとき。
ヒカルの体がふいに硬直した。
「やだ・・・・」
「・・・進藤・・・・?」
「や・・・だ、塔矢」
振り返った塔矢は、ヒカルの見開かれた視線の先に、犬の両手が
あるのに気が付いた。
手袋をしている。
(ああ、フィスト用って言っていたなあの手袋)
アキラは納得した。
そもそもアキラは、フィストが何を指すのかわかってなかった。
手紙の内容にフィストとあり、グッズの広告にフィスト用
ラバー手袋と書いてあったから注文してみたのだ。
持ってきた配達人の説明にさすがにアキラも驚き、本当に
使おうと言う気はさすがになかったのだが。
ヒカルはは怯えた口調で、アキラに哀願した。
「や・・め・・てくれ・・よ。頼むから・・死んじゃう・・よ」
「・・時間をかければ大丈夫だって言ってたけど・・」


(31)
ひくりとヒカルの体が硬直し、大きな瞳が、アキラを信じられないものの
ように見つめた。涙のつぶが見る見る盛り上がる。
「いや・・・だ。たの・・・む」
いやいやをするように首をふり、泣き出した。
「進藤・・・」
さすがにアキラも残酷すぎたかと思った。
だけど、冗談だという言葉が湧いてこない。
なんともいえず、嗚咽するヒカルをみていた
突然ヒカルが言い出した。
「塔・矢・・・はオレを憎んでるのか・・・・」
「憎んでる?なんで・・・・」
アキラは聞いた。憎んでいるなどと感じたことはない。
「だって・・・」
アキラはヒカルの言葉を待つ。
「だって・・・・何・・・?キミを憎む理由なんて何もない。キミに
ボクが負けたとしても・・・」
怒っているのかと聞かれれば納得できるが、憎んでいるという言い方が
不思議に思えた。
「でも・・・だって・・・・」
何か言葉を探すように・・・ヒカルがあえぐ。
「だって・・・・塔矢は・・・・ほん・・・とう・・は・・・」
さまよった視線がアキラの強い注視に出会いおびえたようにとまった。
なにか言いかけていた唇を閉じ、下を向いた。
・・・・・・・


(32)

吐き出すようにアキラは言った。
「犬!進藤の体をおさえろ」
「塔矢!」
ヒカルは暴れたが、二人がかりで浴室の床に押さえつけらるまでさほどの
時間はかからなかった。
両手を肩の上で犬に抑えられ、大きく胸をあえがせる。
それでも、逃れようともがくヒカルに向かってアキラは言った。
「犬に入れられるのはいやか?だったらおねだりするんだな」
ヒカルの動きが止まった。
「ボクの手を入れて欲しいって」
涙のたまった大きな瞳が、アキラを見つめる。
沈黙のあと、ヒカルは静かに言った。
「手を離して」
犬が抑えていたヒカルの手を離した。
ヒカルは、アキラを見つめたまま、拘束具の線のついた手を、震えながら
下半身にのばす。
自分で足を開き、その中心に2本の指を指し込み、真っ赤な粘膜を露出させた。
そうして一度目を閉じ、決心するように唇をかみしめあと。
言葉が紡がれた。
「ここに・・・・とうや・・・の・・・てを・・・いれて・



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