無題 第2部 29
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「アキラ…!?」
アキラの目が刺すように緒方の目を捕らえていた。
「バカな事を…言うな。」
だが、アキラはそれには答えず、無言で緒方を見ている。
アキラは緒方を見据えたまま、一歩近づいて、言った。
「したいんでしょう?だったらすればいいじゃないか。」
「…やめろ、アキラ…!帰れ。もう、ここへは来るな。」
緒方は半ば悲鳴のように叫んだ。が、アキラは更に一歩詰め寄る。
「どうして?どうして今更ボクを拒絶するのさ?教えてやるって言ったのは、あなたじゃないか…!」
そこまで言われて、緒方は頭に血が登った。
「おまえ、自分が何を言ってるのか、わかってるのか…?」
立ち上がって、アキラを睨み付けた。
「…わかってるよ。」
挑戦的な目で、アキラは緒方を見上げた。
「…わかってるよ。だって…だって、ボクはそれが欲しくてここに来たんだ。」
「…バカヤロウ…!子供のくせに、馬鹿な事を言うな…っ!」
「子供じゃなくしたのはあなたじゃないか…!」
今にも身体が触れそうな至近距離で、二人は睨み合った。
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