Shangri-La 29


(29)
「――進藤?」
ヒカルはゆっくりと声のした方を振り返った。
はっきりは見えないものの、アキラは眠たげに目をこすっているようだ。
「やっぱり、眠れなかったんだ?」
「あ、いや…、喉、乾いて」
ヒカルは手元のグラスをかざして見せた。
「ふぅん、でも、あんまり起きてちゃダメだよ。癖になるから」
アキラは意外にもあっさりとヒカルを置いて、キッチンを後にした。
(寝ぼけてる…のか?まぁ、いっか…)
ここ最近を振り返るに、たぶん今晩はもう眠れないだろう。
大体にして、暗いうちに眠れただけでも奇跡的だ。
することがなくて、ヒカルはまた、流れる記憶に意識を預けた。
しかしそれは濁流のような量と勢いでヒカルを苛み
暫くの間、思考を放棄してきた頭には、少し荷が勝ちすぎた。
思考に疲れ、何も考えないよう漫画でも読もうとして、部屋へ戻った。

アキラはベッドの上で身体を半分起こし、うつらうつらと船を漕いでいた。
「塔矢、変な格好で寝るなよ…、塔矢?」
手を貸して横にしてやると、ヒカルにしがみついた状態のまま
アキラはにっこり笑いかけてくる。
おやすみ、と囁くと、アキラは微笑をたたえたまま、貪るように口づけてきた。
ヒカルは驚いて身を引こうとしたが、アキラの両腕に搦め捕られて
なすがままにベッドに組み敷かれた。
執拗に舌を求めるアキラにヒカルが負けて、舌を少し浮かせると
アキラは無心にヒカルの舌と戯れた。



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