パッチワーク 29
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そう、僕と彼は最初ただの友達だった。彼は僕に比べればクラスメートとくだらない話をするなんて言う
地に足の着いた中学時代をおくっていたし、中学を卒業しても院生時代の仲間がいた。それに同期の越智
も和谷君も同年代だ。僕の同期は辻岡さんと真柴さんで歳が離れているし他に友達と言ったら芦原さんく
らいしかいなかった。 僕にとっては久しぶりの同年代の友達だったせいかちょっと浮かれてたかもしれな
い。だから検討のあと彼とバカ話をするのはそれなりに楽しかった。そんな中で彼が既に幼なじみと経験
したことも知った。胸の奥が痛んだけれどそれは自分が彼に比べて奥手だという劣等感だと思った。でも
そのあとその彼女が彼の家に下宿するようになり、彼の体臭に時々女の子のする安手のコロンの香りがか
すかだけれど混じるようになった。さりげなく話をし向けると「一人で寝てるとなんか時々寂しくなるん
だ。そんな時はあいつの部屋で寝るんだ。」「そんなことして嫌がられないの?」「あいつも、ずっとお
姉ちゃんと同じ部屋で寝てたから一人だと寂しいって言ってる。」「なんか、同じ部屋で寝てる人がいる
と安心しねぇ。」僕は彼と一緒の部屋で寝ていると自分の心臓の音がやたら大きく聞こえて、彼にもこの
音が聞こえてしまうんじゃないかと不安になっていたから「違う」と言いたかったけれどそれじゃぁまる
で彼と同じ部屋にいることが不安だと思われると思って彼に同意した。
いけない、思ったより時間が経っている。今日の内にもう一つやっておかなければいけないことがある。
この半年乗っていなかった車を箱根に持って行く前に整備に出そうと思っていたんだ。僕の車はシトロエ
ンの2CVで色は黒とグレイのツートンカラー。免許を取ったとき彼がプレゼントしてくれた。
http://www.riesen.co.jp/2CVGray1.jpg
そして僕が彼に選んだのは黄色のROVER MINI
http://www.isize.com/carsensor/CSphoto/bu/030807/0/W/00/H001890000101010101B0001011S.JPG
勿論どちらももう製造中止になっているガソリン車だったから今の環境基準に合う電気自動車にして内装も
当時のもののレプリカを特注した。
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