失着点・龍界編 29


(29)
若い男から連絡を受けた沢淵は対局の中断を緒方に申し入れた。
緒方の方も思ったよりも時間がかかってしまった事を気にしていて
申し入れを受けた。
もう学校からアキラが碁会所に来ている頃だ。
ふと気が着くと、部屋の隅の壁にもたれているヒカルと同い年くらいの
少年がいた。
いつからそこに居たのか全く分からなかった。
顔を腫らし、あちこちの絆創膏が痛々しい。照明のせいもあるがひどく
顔色が悪い気がした。だが目付きは異様に鋭い。
赤い髪に印象的な大きな目をしている。間違い無くヒカルの友人の
三谷だろう。
向こうも見なれぬ客に警戒し注意を払っているようだった。
「…気に入りましたか?」
沢淵が石を集めながらニヤニヤしながらこちらを見ている。
「…対局料は高そうだな…。」
「先生にはサービスしておきますよ。ただ今日はちょっと彼は先約が
ありますので…。いつでもどうぞ。」
とりあえず“顔見せ”だけのようらしい。三谷はすぐに別の席の男に
呼ばれてそちらに向かった。
三谷かどうか確認したかったが、その時は、緒方は黙ってそこを
離れるしか無かった。
よもや、そのビル内にアキラが居るとは緒方は思わなかった。



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