昼下がりの遊戯 29


(29)
進藤ヒカル……細い細いとよく言われるとはいえ、
れっきとした男子高校生である。
その渾身の力で殴り飛ばされた塔矢アキラは
そりゃあ、みごとに2メートル程もすっとんだ。
そして、すっとんだ先には冷蔵庫。
ごつんと固い音がしてアキラは倒れたまま動かない。
「と、塔矢……」
さしものヒカルもちょっとまずいことになったかと倒れたままのアキラの顔をのぞき込む。
「おい……!塔……」
その瞬間、ヒカルはその言葉の先をアキラの唇に奪われた。
「ん……う……」
しばらく、ヒカルの舌の感触を堪能したあと、アキラはわずかに唇を放して言った。
「痛かった」
「わりぃ……」
「ぶつかった瞬間に星がちって、このまま気を失うかと思った」
「悪かったよ」
「まだ頭がずきずきする。後遺症でバカになるかも」
「だーかーらー、謝ってるだろうが!!」
「そう、じゃあ、君が本当に悪いと思ってるなら」
アキラの瞳にイタズラめいた光りが戻った。
「ぼくが持って来た、あれ、使って」
アキラが、床に散らばった、ファンシーな形のバイブレーターを指さした。
「あれを使って、君が昨日、僕の夢の中でやってたことをその通りに再現してくれるなら、
許してもいい。」



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