Trick or Treat! 29 - 30
(29)
クチュ、ネチュと粘着性の音を立てて緒方の長い指がアキラの中を動く。
その間アキラはもう観念したというように目を閉じ、片手の親指を唇に押し当てて
耐えていた。
閉じた瞼の縁は赤みが差して濡れ、緒方の指に探られる内部は先ほどの口唇以上の
貪欲さで侵入者に熱く吸い付き、生き物のように蠢きながら締め付けてくる。
「・・・オレの指が、好きなんだな」
揶揄するように先刻の言葉を繰り返してやると、アキラは一層悔しそうに唇を噛み
無言でシーツに顔を埋めてしまった。
そんな態度とは裏腹に、指を埋めた箇所がキュッキュッとせがむように何度も
指を締め付けてくるのが可笑しくいとおしい。
「・・・よし」
十分に慣らした感触を得た緒方はアキラの背後に膝をついて熱い昂りを取り出し、
薄い腰骨を掴んで狙いを定めると、一息に腰を進めた。
「あ、あー・・・っ、ンくっ、・・・フゥッー・・・!」
アキラの手指が握り締めるようにシーツの上を掻く。
熱く湿った柔らかな肉できつく締め上げられ、緒方は思わず全身を強張らせた。
「こら、もう少し、・・・緩めろ」
アキラはやるせなく息を荒げながら関節が反り返るほど強くシーツの上に指を立てて、
何とか緒方の注文に応えようと努めている。
緒方の眼下にあるアキラの肩から背中にかけては薄青い小花模様のエプロンの紐が
罰点形に渡され、それがウエストの部分で蝶々の形に結ばれている。
それはアキラが自分の帰りを待ちながら夕飯の支度をする為のものだったと思うと愛しい。
それと同時に、台所という限りなく日常的な場所でシチューなど掻き混ぜていたアキラが、
いまエプロン姿のまま下半身だけを剥き出しにして自分に貫かれ喘いでいるという
非日常的な状況が緒方を煽った。
「・・・動くぞ」
馴染ませるのもそこそこに腰を動かし次第に加速し、
アキラの鳴き声と痙攣する内部の感触を余すことなく堪能しながら、
緒方は締め上げてくる器官の最奥目がけ熱い迸りを叩きつけた。
(30)
「んぅ・・・」
ぐったりとベッドの上にくずおれたアキラの身体を仰向けると、
アキラは目尻をうっすらと濡らし、蕩けてしまったような表情で瞼を閉じている。
濡れた目尻を指で拭ってやりながら緒方が囁いた。
「・・・痛かったか?」
「だいじょ・・・です・・・」
「そうか。・・・よかったか?」
潤んだ瞳が薄く開いて緒方を見た。
「・・・よかっ・・・・・・とっても・・・」
「・・・そうか」
唇を触れ合う寸前の距離まで近づけ、濡れたアキラの瞳と見つめあった。
どちらからともなく唇が触れ、ちゅっ、とうぶな音を立てて離れた。
廊下のほうでは洗濯機が控えめな音を立てて回っている。
二人が食卓についたのは普段の夕食より一時間遅れた時刻だった。
「やっぱり、少し甘かったですね」
煮崩れしてしまったカボチャのシチューを口に運びながらアキラが言った。
「そうか?美味いぞ」
――アキラが作った物なら何でも美味い。
そう言おうかどうしようか照れ臭くて迷っていると、
アキラが窓辺の小さなカボチャに目を遣り言った。
「あの子。昔を思い出して買ったっておっしゃってましたよね。
昔、ハロウィンで何かあったんですか?」
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