交際 29 - 30
(29)
社の愛撫に対するヒカルの反応はぎこちなかった。快感を受け入れることに、躊躇いが
あるようだった。きっと、アキラ以外を知らないせいだろうと、思った。社も似たようなものだ。
女相手ならいざ知らず、男に慣れているわけではない。たったの一度だけだ。どういう
経緯だったのかを思い出そうとした。相手に誘われたから…好奇心から…。その程度の
軽い気持ち…。その相手の顔ですら、ぼんやりとしか思い出せなかった。
同級生のその彼は社を以前から好きだったと言っていた。幼い感じが少しヒカルに
似ていたかもしれない。
同性の自分に恋をした気持ちを理解することは出来なかったが、好奇心がそれに勝った。
それでもいいと相手は小さく呟いた。涙が滲んでいたように見えたのは、気のせいだったのだろうか。
相手は積極的に社に奉仕した。慣れない手つきで懸命に社を気持ちよくさせようとする
姿にほんの少しだけいじらしさを感じたが、それだけだった。社にとっての初めての同性との
体験は大した感銘もなく終わった。その時の感想は、ふーん…こんなもんなんか…だった。
とにかくそれで、社の好奇心は満たされた。相手に二度と会うこともない。もう、男と
セックスをすることもないだろう。そう思っていた。
その自分が、ヒカルを好きになってしまった。月明かりの下で、大きな瞳でキョトンと
自分を見つめるヒカル。あのほんの一瞬で囚われてしまった。
―――――理屈やないんやな…こういうことは…
彼はどうして、自分を好きになったのだろうか……。頭の片隅でぼんやりと考えた。
(30)
ハアハアと荒い息をはくヒカルの胸が上下する。それにあわせて、紅い果実が誘うように
震えた。
ヒカルの両胸を掌で押さえると、親指の腹で乳首を押しつぶした。円を描くように撫でさする。
「あ…!ひゃん…や…やあぁ…」
ヒカルが悲鳴を上げる。その甘い声をもっと聞きたくて、何度も同じ行為を繰り返した。
「やだよ…やめろ…」
身体を捩ろうとするヒカルを押さえ付け、その薄い胸に顔を寄せ、頬ずりをした。
すべすべとした肌からは、ボディーソープの優しい匂いがする。目の前にある嬲られて
紅く色づいた突起を強く吸い上げた。
―――――石鹸の味がするんかな?
そんなことを考えながら、舌で舐った。
甘い砂糖菓子のような味だ……そう感じたのはたぶん自分の錯覚だろう。わかっていたが、
それでも社は、それがクリームででも出来ているかのように舐め続けた。
「あ、あ……やぁ…ひ…やだ…やめてよぉ…」
ヒカルは、胸から引き剥がそうと、社の髪を掴んだ。その瞬間に弄んでいたそこを軽く
噛んだ。
「ひ…あぁ…!やだぁ…も…やだよ…やだよぉ……」
ヒカルの声に涙が混じる。片手で目元を隠した。もう片方の手は社の髪を掴んだままだ。
社はまだ止めなかった。泣いているヒカルが、可愛かったのでもっと泣かせてみたかった。
ヒカルは、社の愛撫に耐えきれず、とうとう両手で顔を覆ってしまった。握りしめた手の甲で
グイグイと目を擦っている。
「……もう…止めてくれよぉ……」
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