初めての体験 29 - 30
(29)
頬を紅潮させ、喘いでいるヒカルを揺すりながら、門脇は聞いた。
「なあ・・・何でオレを誘ったの?」
「かどわきさ・・・つよいから・・・オレ・・・」
ヒカルが荒い呼吸の下から、答える。
「強いから?」
「オレ・・・つよいひと・・・すき・・・だから・・・」
自分を負かした少年に強いと言われて、門脇は嬉しかった。
「オレ・・・本当は学生三冠だったんだ・・・お前に負けたけどな・・・」
と、ちょっと寂しげに笑って呟いた。
その呟きがヒカルに聞こえたかどうかはわからなかった。門脇が与える
快感を、ヒカルは必死に追っていた。
二人で授与式の会場に戻ったが、門脇とは入り口で分かれた。
アキラがヒカルを見つけて、駆けてくる。手には賞状を持っていた。
「進藤・・・!どこへ行っていたんだ?」
「ごめん。知ってる人に会って、外で話しをしてたんだ。」
ヒカルがアキラにペコッと頭を下げた。
「知ってる人ってさっきの人?」
アキラが怪訝そうに訊ねた。悪びれずヒカルは答えた。
「うん。元学生三冠だったんだぜ。どーりで強いはずだよ。」
「対局したことがあったんだ?」
「院生の頃、一度ね。」
ふーんとアキラは呟いて、そっとヒカルの手を握った。
「どうしたんだ?塔矢。」
ヒカルがアキラの顔を覗き込んだ。普段のアキラは人目があるところでは、
決してこんなことをしない。黙り込んでいるアキラの手をヒカルはぎゅっと握り返した。
「ごめん・・・。黙って出ていって・・・。帰ったら、二人でお祝いしよう。な?」
俯いているアキラに話しかけた。
「塔矢が、賞状うけとるとこ見れなかったな・・・。ごめん。」
アキラは顔を上げて、照れくさそうに言った。
「進藤・・・。ボクこそ子供みたいに拗ねたりして・・・。」
そして、ヒカルの手を強く握った。
ヒカルは『アキラは本当に可愛い』と思った。その『可愛い』には、もちろん、
色々な意味が含まれているのだが・・・。
ヒカルは、アキラにじゃれつきながら、
門脇・・・元学生三冠!油断大敵!やっぱつえーぜ!
と、手帳に書いておこうと思った。
<終>
(30)
ヒカルは悔し涙にくれていた。思い出しても腹が立つ。いろんな男を手玉に取っていた
ヒカルだったが、いかがわしい男に拉致され、いいように弄ばれてしまったのだ。
棋院からの帰りに浚われて、廃ビルの中で犯されてしまった。下半身を裸に剥かれ、
犬のように這わされた。腰を押さえ付けられて、何の準備もしてないところを、
思い切り貫かれたのだ。
ものすごく痛かった。
「痛ぁ────────い!」
男は優しさのかけらもないやり方で、ガンガンとヒカルを突き上げた。
「痛・・・痛い・・・やめてよ・・・ねぇ・・・」
ヒカルが涙声で訴えたが、男は無慈悲にもヒカルを責め続けた。
男が後ろの穴を出入りする度、グチュグチュといやらしい音がして、ヒカルの
羞恥心を煽った。体中がカッと熱くなった。
激しく突き上げていた男の動きが、一瞬止まった。
「うっ!」と低く呻いて、男がヒカルの中に熱いものを放った。
「う・・・うぇ・・うぅ・・・」
ヒカルが嗚咽を漏らした。『でも・・・これで帰してもらえる』犯されたことは
悔しくて悲しかったが、男が欲望を吐き出したことで、ヒカルは解放して
もらえると思った。
だが、男はヒカルの中から出ていかなかった。再び動き始めた男に、
ヒカルは哀願した。
「ねえ・・・ね・・・やめてよ・・・ねぇ・・・」
男がヒカルの中に放った体液のおかげか、最初ほど激しい痛みはなかった。
男の動きも、先ほどより余裕が出来たのか、ゆっくりとしている。
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