初めての体験 Asid 29 - 34
(29)
ボクは、俯せで転がされている老人の後頭部を掠めるように、ベルトを振り下ろした。
老人の身体がビクッと震える。
「先生、ちっともボクの質問に、答えてくださらないんですね…」
ボクは、静かに立ち上がった。そうして、押し黙ったままの老人のすぐ脇にある邪魔な膳を、
思い切り蹴飛ばした。派手な音を立てて、陶器の器が畳の上に投げ出された。幾つかは、
欠けてしまったかもしれない。
足で、老人を転がす。枯れ木の様な身体は、簡単に仰向けになった。ボクは、立った
まま、本因坊を睨み据えた。
「進藤ヒカル――――ご存じですよね?」
一瞬、老人の瞳に動揺が走ったのをボクは見逃さなかった。
「彼とここに来たことが、あるのではないですか?」
本因坊は、慌てて首を振った。ウソだ―――――直感的にそう思った。
「彼――――ボクの恋人なんです。」
ボクがそう言ったと同時に、冷水を頭から浴びせられたかのように、老人の身体がぶるぶると
小刻みに震えだした。
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ボクは、今、「ここに進藤と来たことがあるか?」と訊いた。「来ていない」と、いうのが、
ウソだとすると…この老人は少なくとも二回以上進藤と――――――!?
だって、あの時は地方のイベントだったんだ!ここは、東京…。ああ…知りたくなかった。
進藤がこの猿に……!し・か・も 二 回 も !!!ジジイ!こんなカマかけに、
簡単に引っかかるな!
だが、例え老人がしらを切ったとしても、ボクは彼が白状するまで執拗に嬲り続けた
だろう。だから、結果は同じだ……同じなんだけど……ああああぁぁぁ!!!でも、納得
できない!身勝手と言われても、認められるかぁ!
ボクの心は、怒りの臨界点を突き抜けて、逆に酷く冷静なっていた。無理に感情を
抑える必要はない。頭の中は異常な程に冴えていた。
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ボクは、本因坊を冷たく一瞥した。と、ある一点に、視線が止まってしまった。怯えた
表情とは裏腹に、老人のグロテスクなモノは隆々と立ち上がっていた。
相当、強力な薬だったらしい。たった一口でこれか……。全部飲んでいたら、死んでいた
かもしれないな。そのほうが、よかったのに……。 だが、よく考えると、あれは本来ボクが
飲むはずの物だった。若い僕でも、ただですむわけがナイ!徹底的に、虐めてやる!
「はしたないですね。ここをこんなにして…」
ボクは、ベルトで、軽くそこを叩(はた)いた。「うぅ!」老人が小さく呻いた。
続けて、何度も叩く。力を入れずに、ごくごく軽く。老人の口から、熱い息が吐かれた。
「感じているんですか?こんなことをされているのに?」
そう言いながらボクは、思い切り、老人の太股を打った。
パァン!―――――鋭い音が座敷に響いた。
「ひぃ……!」
悲鳴が上がる。痛みで本因坊のモノは、少し萎えてしまった。
ボクは、再び老人をベルトで軽く嬲る。とても優しく、愛撫するように…。そして、
その後は――――――
それを何度も何度も交互に繰り返した。
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最後に強く老人自身を打ち据えた。本因坊は、「ひぃっ!」と大きく息を吸い込むと、
とても老人とは思えぬ勢いで、汚汁をまき散らしながら果てた。
その姿の醜さに目を背けたくなった。涎にまみれた弛緩した口元。どんよりとした瞳。
己の吐き出した液体に汚れる干からびた下半身。そして、浅ましくもまだ、存在を誇示している
本因坊自身。
ボクは、本因坊を冷静に観察しているうちに、自分の誤りに気がついた。ボクは今まで、
老人を同じ趣味の持ち主だと思っていたのだが…もしかして…もしかすると………。
突然、ボクの思考は遮られた。
「うで…腕が痛い…はずしてくれ…」
老人が呻いたのだ。後ろ手に縛られた腕が、身体の重みでよけいに痺れるらしい。
「へえ…辛いと言う割に、ここはずいぶんと元気なようですが…?」
足で、思い切り踏みつける。靴を履いていないのが残念だ。この靴下は捨てて帰るか…。
老人の息が瞬間止まった。だが、目には情欲の色が濃く浮き出ている。
ボクはベルトを放り投げると、本因坊の側から離れた。老人の顔に戸惑いと絶望が浮かんだ。
壁に寄りかかって、老人を眺める。身体を捩らせたり、足をもぞつかせている。時折、
何か言いたそうにボクを見る。その訴えるような視線を冷たく無視した。
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「と……や…」
本因坊が、か細い、だが、粘るような声でボクに呼びかける。
「ボク、素直じゃない人嫌いなんです。」
汚物でも見るような視線で、ボクは、老人を一瞥した。
「先生は、先ほどからウソばかり…ボクが子供だと思って侮っているんでしょう?」
「これ以上、ボクを騙そうとするなら、ボクはこのまま帰ります。」
老人が、上半身を無理やり起こし、苦しい姿勢から懇願した。
「ま…待て………言う…言うから……全部…」
本因坊は、「本当ですか?」と訊うボクに、何度も頷いて見せた。落ちた…!
訊きたいことは、たった一つ。進藤のことだけだ。本因坊が何人棋士を連れ込んだか
なんてどうでもいい。この老人がどんな風に進藤を抱いたのか…それが知りたい。
「先生、進藤をどうやって汚したんですか?やはり、薬ですか?」
「そう…じゃ…薬をつかって…身体の自由を訊かなくして…」
ボクは、詳しく訊ねた。どうしたことだろう?本因坊への怒りは変わらず胸の中に熱く
滾っているのに、老人の口から語られる事実に次第に興奮していく。この醜い老人が、
可憐な進藤をどのように蹂躙したのか想像しただけで…股間が…。―――ヘンだ…。
いくらボクでも、大事な恋人を酷い目にあわされたのに…こんな………進藤、ゴメン。
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本因坊の唾液や、精液で身体中をどろどろに汚されて…咽び泣く進藤。まるで、その場で
見ていたかの様に光景が浮かぶ。イメトレの成果が、こんなところで発揮されるとは…!
しかし、本因坊から、ボクの想像を遙かに超えた事実を告げられた。二度目は老人一人では
なかった!指導碁ってそう言う意味だったのか?一体、進藤にナニを指導させたんだ!?
そして、その事実にますます激昂するボク自身……。ショックだ……。頭を強く振って、
想像をうち消そうとした。
だが、きつく閉じた瞼の裏には、二人の男に押さえ付けられ、本因坊を無理やり受け
入れさせられる進藤の哀れな姿や、屈辱の涙に濡れる愛くるしい大きな瞳がリアルに映っていた。
ボクは、老人を乱暴に転がすとその後ろの部分に、乱暴に己を突き立てた。進藤の受けた
屈辱はボクがはらす。本音を言えば、コンドームが欲しい。が、この際仕方がない。
「ぎゃあぁ!」
老人が、断末魔のような悲鳴を上げた。ボクが無情に突き上げる度に、老人は派手な
泣き声を上げた。ざ・ま・あ・み・ろ!…だ。
――――――――進藤を犯した老人を、今度はボクが犯している。
どうしよう。何だか、倒錯的で妙な気持ちになってきた。最初はわめいていた本因坊も
今では、目は恍惚と潤み、口はだらしなく弛緩している。
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