Happy Little Wedding 3


(3)
「オレも、先生たちと一緒でいいです」
「そう?それじゃ五人分、今から電話でお願いしちゃうわね。
アキラさん、そこねぇ、とっても美味しい苺のアイスクリームもあるんですって」
「いちごのアイス・・・」
「そう。だからちゃあんと目が覚めて、ご飯をたくさん食べられたら、
デザートに頼みましょうね」
さすが母親は我が子の扱いに慣れている。
眠そうに開いたり閉じたりを繰り返していたアキラの目が、急にキラキラキラと輝き出した。
「うんっ、ボク、たくさん食べる!」
アキラの母である人は、息子の反応にニッコリと頷いて電話を探しに去っていった。

宿からの送迎バスを待つ間も、アキラはずっとクマのぬいぐるみを抱きしめながら
その耳元に向かって何やら囁いていた。
内緒話のつもりなのだろうと思って、気づかれないように耳を澄ますと、
「いちごのアイスだって〜。おいしそうだねぇ?・・・」
と聞こえる。
もともと動物好きで、動物の形をした人形や菓子などにも深く思い入れる質の子供だった
アキラだが、去年の冬に師匠が買い与えたそのぬいぐるみは特にお気に入りおもちゃの
殿堂入りを果たしたらしく、最近では見るたびにそれを抱いていた。
単純に今まで持っていた中で一番大きなぬいぐるみを買ってもらって嬉しかったということも
あるのだろうが、どうやらそれだけではない。



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