第162局補完 3
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「塔矢、待てよ!」
ヒカルは必死で追い縋りながら、隣に並んで呼びかける。
「もしかして、北斗杯の予選が終わるまで碁会所に行かないって言ったの、そんなに怒ってるのか?」
「当たり前だろう!!」
凄まじい勢いで振り向いて怒鳴りつけられて、ヒカルは思わず一歩後退った。
「あんな事を言い捨てて放って置かれて、平気だとでも思ってたのか?」
アキラの剣幕に気圧されしたように息を飲んだヒカルを睨みつけて、アキラは続ける。
「ボクにどうしろと、どうすればよかったって言うんだ。
選手決定なんか辞退して予選に出ればよかったとでも?
ボクだって、ボクの方こそ、」
キミと戦えるかと思ったのに。戦いたかったのに。
実績で代表決定なんて言われて、最初はああそうか、と思った。当然の事のような気もしたけど、
でも別に嬉しくもなかった。
でもその次に思ったのは、進藤はこの事をどう思うだろう、という事だった。
結果は案の定だ。
ボクだって、予選に出たって負けるつもりなんかない。落ちるはずがない。
そんな事よりキミと戦いたかった。
それなのにキミは、ボクのそんな気も知らないで、一人で勝手に怒って。
ああ、嫌だ。こんな事でこんなに苛ついてる自分が嫌だ。こんなくらいの事で泣きそうになってる
なんて、そんな自分が大嫌いだ。進藤のせいで。キミさえいなけりゃこんなつまらないことで腹を
立てることなんてないのに。
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