無題・番外 3
(3)
「だが、オレが惚れたのはアイツのお綺麗な外見と言うよりは…」
意志の強い瞳の光や、真剣さとひたむきさ。その裏の意外な脆さ。一見、素直で育ちのよい少年に
見えるが、その実、わがままで自分の意志や欲望にも素直で忠実で貪欲な所。
グラスの中の液体を見詰めながら、そんな言葉を緒方は心の中で浮かべた。
「ほんとに惚れてたんですねえ…」
感傷に浸っている様子の緒方の様子を見て、感慨深く、芦原が言った。
「それにしても、緒方さんをふっちゃうなんて、たいしたひとですよねぇ」
「そうさ、たいしたヤツさ、アイツは。
このオレを良いように手玉にとって涼しい顔をしてやがるんだからな。
しかも、オレときたら、物分かり良く、そうかわかった、ガンバレよ、ときたもんだ。」
「ふうん、さすが大人ですねぇ」
「大人なもんか。やせ我慢さ。
バカなプライドなんかのために、引き止める事もできない小心者だよ、オレは。」
引き止めるどころか、自分から手放した。
バカな事をしたのかもしれない、今頃、そう思った。
結局の所、アキラにとってオレは何だったんだろう。
緒方は最後に聞いたアキラの声を思い出そうとした。彼は何と言っていたろう。
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