Shangri-La 3


(3)
「アキラ君、最近ぴりぴりしてるな」
碁会所から出た所で、聞きなれた声に図星を指され、
アキラは思わず大げさに振り向いてしまった。
「緒方さん…」
「彼女と喧嘩か?」
緒方は、くくっ、と喉の奥で意味あり気に笑いながらアキラの隣について歩く。
「少し飲まないか?」
――今この人に余計な詮索をされたくはない。
「ボクは未成年ですから」
アキラは素っ気無く返すとすたすたと先を急ぐ。
「いいじゃないか、少し付き合えよ。」

結局アキラは緒方のマンションに来てしまった。
今日に限った事ではないが、緒方の誘いは巧妙で躱し辛い。
アキラにとって都合が悪くなればなる程、誘いを断るのは困難な状況に追い込まれる。
こういう時には本当に嫌な人だ…。アキラは軽い溜息をつき、緒方の部屋へ上がった。

「アキラ君、何飲む?今うちにあるのはジンと、バーボンぐらいしかないが」
「どうぞお構いなく。すぐ帰ります。」
「まぁそう言うなよ。飲まずにはいられないって顔、してるぞ?」
緒方から透明な液体の入ったグラスを受け取り、無言で口をつけた。
「未成年だから飲まないんじゃなかったのか?」
その指摘はアキラの予想通りだった。
「出されたものは残さず頂きます。」
アキラは、わざとにっこり笑顔を作って見せたがすぐ真顔に戻った。



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