白と黒の宴2 3


(3)
ヒカルは全くこちらに気がついていなかった。ヒカルが他の棋士と何かが違うとしたら、
その徹底した集中力の差だろう。
一度自分が打つ碁の世界に入り込んだら恐らく周囲を火に囲まれても動かないかもしれない。
アキラは安堵した。盤面から読み取れるのはヒカルの勝利だ。この先にまだ必要な
複雑な手順もヒカルの頭の中ではすでに構築済みだろう。
もう一度社を見た。
彼もまた全身から炎のようなオーラを放って全力でヒカルと戦っている。
その時、嫉妬に近いものがアキラの中に沸き起こった。それが社に対してなのか
ヒカルに対してなのか、アキラ本人にも判らなかった。

アキラや周囲の者達の分析通りに程なく社が投了した。
別室で検討会に入る中でアキラは相反する二つの思いを抱えていた。
社は負けた。その事にホッとしながらも彼がヒカルと生み出した棋譜があまりに魅力的だったからだ。
彼ではなく越智が選手となる事が最適だとはとても思えない。越智には申し訳ないが。
その場に居た者全員とで対局場に戻った。
一瞬また社と目が合った。だが社はアキラに何の関心も示さない様子だった。
「…?」
そう言えば、てっきり上京早々にでも何か連絡なり碁会所に現れるなりする可能性を
考えていたが結局社から何のアプローチもなかった。
かえって社のその態度がアキラの中に不安を募らせた。社の考えが読めなかった。



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