バレンタイン 3
(3)
俺はビニール袋を探る手を止めた。
その、アルトの鈴を転がしたようなハスキーでいながら色っぽい声は確かに――
「アキラたん………!」
「こんばんわ」
このおでんくさいコンビニに、俺の天使は確かに降臨していた。俺の目線より8センチ低い
アキラたんの頭部は今日もスペシャルに美しいキューティクルの光を放っていた。
「尚志さんに、チョコレートを渡そうと思って」
…と、アキラは明らかに俺の手の中にある赤い包装紙のチョコレートに視線を投げる。
この、消費税込み525円のチョコレートを。
俺が今から袋に入れるこのチョコレートを。
アキラたんは俺にくれようというのか。
「あ…じゃあ袋は要らないね…」
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