通過儀礼 自覚 3
(3)
「ずるいよ。だって今のボクが右手って言った後に左手に石を隠すことだってできるもん」
アキラは文句を言う。だがイカサマなどせずに偶然勝った加賀は、それを聞いて怒りを自
制できなくなった。
「何だよそれ。おまえがはずしただけなのに、何でオレがズルって言われなきゃならない
んだ?」
「それじゃあもう一度しよう。今度はズルしないように腕を隠さないで前に出してよね」
アキラは威張るようにそう言った。負けず嫌いと不正を許さない真面目さがそうさせたの
だろう。だがそれは加賀の目には生意気にうつった。
「どっちに入っているかなんて、そんなの石を握る手は握ってない手より力が入っている
んだから見ればすぐわかるだろ。それならどっちの手に入っているかじゃなくて、手に何
個石が握られてるか当てるゲームにしようぜ」
「…いいよ」
加賀の提案にアキラは頷いた。一度始まってしまったゲームを途中で終わらせることなど
できなかったアキラは、絶対に勝つとでもいうような目で加賀に挑んだ。
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