裏階段 三谷編 3
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こちらの視線がその火傷に留まったのを感じたのか、彼はそれまで体の両脇に無造作に置いていた両手で
開いていたシャツの前を閉じてしまった。怒ったように背を向けて体を丸める。
「…悪かった。」
仕方なくこちらも起き上がり、彼に背を向けるようにしてベッドの縁に腰掛け、サイドテーブルの上に
置いてあった煙草とライターに手を伸ばす。灰皿もそこにあった。
そんなに欲情していた訳ではない。彼に誘われた訳でもない。
それなのにここにこうして二人で居る事が不思議だった。おそらく彼もそうだろう。
その答えを探すためにここに来た。そうとしか言えなかった。
初めて出会った時から、互いに抱いた予感だったから。こういう時が来るのではないかという。
目の前を揺らいでいた紫煙がかき消え、ふいに彼の両腕が背後からこちらの首に回されて来た。
ほとんどベッドを軋ませず彼は近寄って来ていた。
こちらの関心が自分より煙草に向いたのが気に入らないようだった。
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