残像 3


(3)
そしてあの日を境に、また、キミは変わった。
どこがどう変わったのかは上手く言えない。
けれど、ずっと感じていたピリピリとした緊張感が消え、何か一皮むけたような、自然な佇まい
をボクは感じた。
何があったのかはわからない。けれどボクの知らない所で、また一つ、キミは大人になった。
ボクはそう感じた。
彼の変化はきっと彼にとって好ましいものであるはずなのに、ボクは一抹の寂しさを感じずには
いられなかった。一足先に大人になってしまったキミに、置いて行かれてしまったような、それは
きっとそんな感傷だったのかもしれない。
「追ってこい」とボクは言ったけれど、本当は追いかけているのはボクの方だ。
いつも、ボクは背後のキミの足音に怯えながら、キミを追いかけていた。

お父さんはいつもボクの先にそびえ立つ、間違えようのない道しるべだった。
そこにキミがカベのように立ちふさがった。あの時からキミはボクの中に焼き付いて、ボクは
キミを忘れられなくなった。ボクはキミを超えたいと、そのカベに挑みながら、一方でボクを
追いかけてくるキミの足音を聞いていた。だけど。
「神の一手を極めるのはオレだ。」
そう言ったキミの言葉が、なぜあんなにもショックだったのか。後から気付いたよ。
それまでキミはずっとボクを追っていた。ボクは追いかけてくるキミを、背中で感じてた。
ボクはその足音に怯え、不安になりながら、でもどこかでキミが追ってくるのを嬉しいと思って
いた。だから「追って来い」なんて言ったんだろう。
でも、いつからなのか。
今、キミが追っているのはボクじゃないね。
キミはもう、ボクなんか通り越して、ボクにはわからない、どこかずっと先を見ている。
それが―sai?キミが追っているのはsai?
ボクが追って、追って、追いかけて、多分、ついに掴まえられなかった、超えられなかったカベ。
今度はキミが、それを追っているのか?



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