Cry for the moon 3


(3)
進藤は戸惑ったように俺を見たが、すぐに笑顔になった。
たったそれだけで俺の心はざわつく。
「久しぶり、卒業式以来だな。元気そうで良かった。ここで働いてんの?」
懐かしい声。進藤は普通に話しかけてくる。けど俺の口はうまく動いてはくれない。
「まあな」
「なんだよ進藤、知り合いか?」
後ろにいた一人が身を乗り出してきた。
「うん。中学のときの囲碁部の友達。三谷、こいつら俺のプロ仲間」
「いらっしゃいませ。予約されていた方ですね。上へどうぞ」
ちょうど店主が割り込んできて、座敷へと案内した。俺も後に続く。
「今日はさ、みんながオレのタイトル祝いをしてくれんだ。なあ三谷も一緒に食べない?」
何のわだかまりもない口調に俺は苛立ちを覚える。
「俺、働いてるんだけど」
「うん、じゃあオレ達の専属になってよ。おっちゃん良いよね? たくさん食べるからさ」
「何を勝手なことを言って……」
「いいよ三谷くん。今日は他に入ってくれる子がいるし、相手をしてさしあげなさい」
反論しようとしたけど、耳元で店主にどすのきいた声で、多く注文を取れ、なんて言われ
たら何も言えなくなってしまった。くそっ。
「……ご注文は?」
「おすすめを適当に持ってきてよ。飲み物は、うーん、このりんごサワーってのがいいな」
「それ酒だけど」
「別に強くないんだろ?」
そういう問題じゃない。未成年なのに飲む気か。だいたい居酒屋で祝おうという神経が
信じられない。プロはみんなこうなのかよ。
「進藤、やめとけよ。見つかってタイトル剥奪になったらどうするんだ」
一番、年長らしい男が声をあげた。
「伊角さんは真面目だなあ。平気だよ。それくらいでそんなことにならないよ。それにさ
見つからなければいいんだから。和谷、越智、本田さんは何を飲む?」
シャギー頭、眼鏡のきのこ頭、ボブカットの男に進藤は声をかける。
3人はメニューを見て、顔を見合わせた。



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