初摘み 3
(3)
結局アキラはプレゼントをもらえなかった。碁会所でもめて、ヒカルが来なくなって
しまったからだ。誕生日の日、家に帰ると自分宛に手紙が届いていた。差出人の名前は
なかった。だが、癖のある元気な文字を自分は良く知っている。中身はカードが一枚きり。
「誕生日おめでとう」と大きく書いてあった。そして、隅の方に小さく「ごめん」と書かれていた。
ヒカルの気持ちが分かるから、自分からは会いに行かなかった。棋院で見かけても、敢えて
声をかけることはしなかった。四月まで待てば、また以前のように会えるから……。
だけど、四ヶ月は長い。自分の中の衝動を持て余して、ヒカルを想いながら自分を
慰めることもあった。
そして、漸くこの日が来た。
腕の中のヒカルはジッとしていた。
「今日、家に来てくれる?」
「うん…でも…」
アキラの言葉に、ヒカルはもごもごと口ごもる。
「オレ…心の準備が…」
本当にこの四ヶ月、囲碁以外のことを考えていなかったんだな―――――――
口に出して言ったわけではなかったが、ヒカルがアキラの表情からその考えを読みとったようだ。
「だって、今日、勝たネエとずっとオマエと会えないんだぞ…オレ、そんなのヤダ…」
「ボクもずっと待ってた…だから来て欲しい。」
ヒカルが小さく頷いた。
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