平安幻想秘聞録・第三章 3
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あれっ、これ、酒じゃん。いいのかなぁ。平安時代じゃ、十五で元服。
つまり大人の仲間入りをするんだっけ。だったら、いいか。後で塔矢に
話したら、不良とか言われそうだな。あいつ、硬いからな。
思わず口元を綻ばしたヒカルに、三条がにっこりと笑みを返す。
「どうぞ、お召し上がり下さい」
「ん、ありがとう」
呑むと身体が熱くなりふわふわといい気持ちになってくる。口当たり
がいいらしく、酒に馴れていないヒカルでもおいしいと感じられた。
「いかがですか?」
「ん、おいしいな」
「お口に合ってよろしゅうございました。では、もう少しお呑みになら
れてはいかがですか?」
「うん、貰うよ」
勧められるままに飲み過ぎたらしい。三条が退いた後、急激な眠気に
誘われてヒカルは夜具の上に、身体を折った。このまま寝たら、風邪を
引くかなと心配したのは一瞬で、すぐに意識が遠くなった。
それから、何時(なんとき)くらいが経っただろう。すっかり寝入っ
てしまったヒカルの部屋の前で、低く潜められた声が聞こえたかと思う
と、すべるように襖が開き、二つの影が中に入って来た。
一度消えたはずの灯台にまた火が入り、部屋の中がぼうっとその灯り
に照らし出される。
「それでは、私は、渡殿(渡り廊下)の先におりますので」
「分かった。頼むぞ」
一人が去り、一人が残った。身を屈めたその人物は、確かめるように
ヒカルを顔を覗き込み、頬にかかった柔らかい髪を払った。
何?何かが触れてる。佐為・・・?
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