スノウ・ライト 3


(3)
さてこの物語には父である王様は出てきません。父親というものは影の薄い存在です。
特にヒカル姫の父はそうです。顔すら出てきません。
ここで出張ってくるのが新たなお后様。
お后の趣味は前妃と同じく碁でありましたが、年頃の少女らしく鏡を見るのが好きでした。
「鏡よ鏡、この物語のヒロインはだぁれ?」
『それはナセさまでございます』
「それはそうよ。女の子はもう一人あかりって子がいるけど、あの子はヘボだもの」
お后様はご満悦でした。しかしある時、鏡はこう答えます。
『それはヒカル姫でございます。ふっくらほっぺが可愛く、やんちゃで明るく、まるで
 その名のごとく光を振り撒いております。ハァハァ』
その言葉にお后様はいらだちますが、自分に言い聞かせます。
「焦っちゃダメ。そのうち、ヒカル姫も成長するわ。そしたら可愛くなくなるわ」
ところが鏡の精はこう答えるようになります。
『最近のヒカル姫は凛々しく、たいそう美しくおなりでございます。物陰からたくさんの
 者たちがその姿を見つめております。その中には隣国の王子もいるとか……ハァハァ!』
お后様、怒り心頭です。
「フン! 負けないから!」
そして良からぬことを考えます。
「狩人のイスミを呼びなさい」
呼び出したイスミに、ヒカル姫を殺すように命じました。



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