失着点・境界編 3 - 4
(3)
露出したままのヒカル自身の先端に軽くキスをすると、アキラはシャワーを
浴びに行った。
外出したらシャワーを浴びてから着替えるという習慣なのは本当らしかった。
ただ、ヒカルには終わった後でなければシャワーを使わせてくれなかった。
「ヒカルの匂いが好きなんだ。…焼いたクッキーのような匂いなんだ。」
真面目な顔でそう言われてしまうと従わざるをえない。
自然、ヒカルは自宅を出る前にシャワーを使う事が多くなった。
その日のいつどこでアキラに求められるかわからなかったからだ。
「何やってんだろう…オレ…。」
ドライヤーで髪を乾かしながら鏡に向かってつぶやく。
そんな毎日が続いていた。
最初の時が、もっとも激しいSEXだった。あの日、自宅に帰り着いた後で
ヒカルは熱を出した。激しい腹痛を起こした。頻繁にトイレに入るヒカルを
心配して母親は医者に来てもらおうとしたがヒカルは断固として拒否した。
「男とSEXして腸の中を掻き回されました」
そんな話でもしろというのか。それにあちこちにアキラが考え無しに残した
痕跡があった。
何気にその事を思い出して何となく急に腹がたってきた。
「なんか飲む?」
タオルで髪を拭き取りながらアキラがバスルームから出てきたところを
ヒカルは腕を掴んで壁に押し付け、首筋の目立つところを狙って
唇を吸い付けた。
(4)
「だめ…だよ、進藤…!」
いち早くヒカルの意図を感じ取ったアキラが圧迫された喉で吐息がちに乞う。
言葉の割にあえて押し退けようとはしない無抵抗な態度に
ヒカルは一瞬怯むが、今まで何度か同じ言葉を自分が発しても
聞き入れてもらえなかったのだ。
なにより、アキラの柔らかな喉元を吸う感覚に一気にのめり込んだ。
「ん…っ」
目を閉じ、逆に顎を少し上向けるアキラ。理性が欲望に負けたようだった。
その時ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
弾かれたようにヒカルはアキラから後ずさりキッチンの椅子にぶつかって
危うく椅子ごと倒れそうになった。
続けてコンコンコンッと忙しなくドアをノックする音に、アキラは相手が誰か
気付いた様子で玄関に向かった。
「やあ、アキラ君、碁会所で進藤君とこっちに戻ったって聞いたから。
二人にお寿司の差し入れ。」
アキラがドアを開け、ニコニコしながら寿司折りを持った芦原が入ってきた。
そして椅子の背を掴んで突っ立ったままの進藤と髪が濡れているアキラに
怪訝そうな表情をした。
「…あれ、検討会してたんじゃないのかい?どうしたの?」
「進藤が疲れてて来てすぐ寝ちゃって。その間にボクはお風呂。進藤は今
目が覚めたばっかなんだ。」
平然とそう話してアキラはポットに水を入れてコンロに乗せた。
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