隙間 3 - 4
(3)
ヒカルが緒方の部屋を訪れるのは、決まって佐為の夢を見た後だった。
勿論、緒方はそんな事情など知らない。ただ、佐為を恋しがって感情を持て余すヒカルが
最初に訪れたのが緒方だっただけだ。緒方はヒカル以外に最後に佐為と対局した棋士だった。
追い詰められたヒカルは緒方に、この寂寥感を埋める方法を、佐為の事は持ち出さずに
緒方に相談した。緒方は簡単だと言った。心の隙間は体で補えば良い。
「俺が教えてやるよ」
そう言った緒方の目は、ヒカルにはこの上なく優しく映った。
例えそれがどんなに非常識な事であっても、毎夜訪れる佐為を失った寂しさを忘れられるなら、
どんな代償も払えると。服を脱がされ、男としての屈辱は快感に溶かされ、羞恥は快楽に飲み込まれて
いった。ヒカルは女を知る前にsexを緒方に教えられた。
それからは、事ある毎に緒方の部屋の前に立つヒカルがいた。
佐為の夢は口実なのかも知れなかった。緒方に、教え込まれた淫猥な行為を懇願するための。
(4)
「全部脱ぐんだよ」
緒方は下着一枚残して躊躇するヒカルに容赦ない言葉を叩きつける。
ヒカルは恥ずかしがって俯いたままふるふると震えるだけだ。
そんなヒカルにテーブルを挟んだソファに座っていた緒方は唐突にあおっていたグラスの
中身をヒカルの下着にぶちまける。ウィスキーの冷たさにヒカルは「ひゃっ」っと悲鳴を上げた。
「そら、脱ぎやすくなったろう?早くしろよ、俺は気が長い方じゃないんでな」
ヒカルは泣きそうに顔を歪めて、ゆっくりと下着を下ろした。
そのペニスは緒方の言葉に反応したのか、ゆるく立ちあがっていた。
ヒカルは慌てて股間を隠して、震えて耳まで真っ赤にしながら緒方の言葉を待っている。
「ふん、もう感じているのか?まったくイヤらしい奴だ、未成年のくせにな。ハハハッ!」
緒方の揶揄もヒカルは甘んじて受けるしかない。我慢しきれなくなったヒカルは
空になったグラスにまた酒を注ぎ始めた緒方にすがるような視線を送る。
「お、が…た…さぁん…」
「ン?焦るなよ…俺はもうちょっと飲みたいんだ。じゃあまずお前、一人でやって見せろ」
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