断点 3 - 6


(3)
それなのに、打っている時は集中していられたのに、終わって検討を始めたらもうダメだった。
何か言う塔矢の声と、石を置く指先に目を取られて、声は聞こえている筈なのに、なんて言ってる
かなんて全然聞こえてなかった。
「…進藤?どうした?」
「…え…?……うわっ!」
ふと顔を上げると、予想もしていなかったほど近くに塔矢の顔があって、慌ててオレは身体を後ろ
に引いた。塔矢は怪訝な顔をして、そんなオレを更に覗き込むようにして、言った。
「どこか具合でも悪いのか?なんだかぼうっとしてるし…」
「ち、違うんだ、塔矢、」
そんな目でオレを見ないでくれ。
無防備に近づかないでくれ。
胸が苦しい。
息をするのさえ苦しい。
どうしよう。言ってしまいたい。
「塔矢、」
オレは思い切って顔を上げて、塔矢を見上げた。
なに、と言う風に、塔矢の優しい目がオレを覗き込んだ。
ダメだよ。塔矢。
そんな目で見られると、オレは…
「塔矢、オレ…オレ…おまえが……」
「言わなくていい。」
言いかけたのを遮るように塔矢が言った。
小さく首を振って塔矢はオレに向かってすっと手を伸ばしてきて、そしてさっきまでオレが見惚れてた
指先がオレの唇に触れた。
カアッと顔が熱くなるのを感じた。心臓がドキドキいってて、どうしたらいいかわからなかった。
そんなオレを見て塔矢がふっと目を細めた。塔矢の手がそのままオレの顎を軽くとらえ、にっこりと笑っ
たキレイな顔が近づいてきて、思わず、キスされる、そう思ってオレはぎゅっと目を瞑った。


(4)
でも、オレを襲ったのは、そんな可愛らしいものじゃなかった。
何が起きたのか、一瞬わからなかった。
気が付いたら、オレは無様に転がっていた。ほっぺたが痛くって、思いっきり平手で叩かれたんだっ
てわかった。何がどうなってるんだか訳がわからなくて、呆然としたまま、転がっていた。
影を感じて見上げると、塔矢がオレを見下ろしていた。逆光になって、表情がよくわからない。
わからないけれど、とても怖かった。
大失敗した。最悪だ。そう思った。
あんな事を言い出して、塔矢を怒らせてしまった。
最悪だ。
そう思って怯えながら塔矢を見上げた。
けど、こんなのはまだまだ最悪の内には入ってなかったんだって、その時にはわかっていなかった。


(5)
「とう、や、」
呼びかけながら身体を起こそうとしてついた手を、足ではらわれて、オレはまた転がった。
そして、塔矢はゆっくりかがんでオレの顔を覗き込んだ。
「塔矢、」
きっとオレの声は泣き出しそうに情けなく震えていたと思う。
「ゴメン、オレ…」
言いかけた所を、また平手打ちされた。それからオレの身体をうつ伏せに倒して、肩を押さえ込むと、
手がズボンに伸びベルトを外そうとしした。
「やめろっ、塔矢、何すんだ…っ!」
オレは必死にそれに抵抗しようとした。だがオレが叫んだり、ばたばたと足を暴れさせてるのなんか
全然気にもかけられなかった。あっという間にオレはズボンも下着も脱がされ、上半身はまだ服を着
ているのに下半身だけをさらけ出されてしまった。
「いやだっ!やめろっ!…あっ!」
暴れるオレを押さえつけるように、急に、アレをぎゅっと握られて、オレは声を飲んでしまった。
一気に身体が固まった。
恐ろしかった。声を出す事も、動く事も出来なかった。背後にのしかかる塔矢がもの凄く怒っている事
だけはわかって、これから何をされるのか、怖くて、オレは息をするのも怖かった。
オレを握りこんでいた塔矢の手が、オレのモノを弄るように動き始めた。
「や、やめろ、何すんだ、」


(6)
「動くな。」
冷たい声でピシリと言われてオレは動きを止めた。
いやだ、そう思うのに、塔矢の手がオレに触っていると思っただけで頭がクラクラする。怖いのと
気持ちいいのが混ざって、オレは混乱した。
「…やめて、塔矢、」
オレが泣きそうになりながら必死で懇願すると、
「やめて欲しいの…?」
突然、息を感じるくらい近くで声がして、オレは背筋がゾクリとした。それだけじゃなくて、塔矢の
手の中のオレもビクンと同じように動いた。
多分それを感じて、塔矢がオレの耳元で可笑しそうに笑う。
こんな風にからかわれて悔しいはずなのに、オレの分身は浅ましく塔矢の手に、耳にかかる塔矢
の息に、感じてしまっている。それを知って更に嘲るように塔矢の手が動き、あっという間にオレは
塔矢の手でイかせられてしまった。
怖いのか悔しいのか情けないのかよくわからなくて、でも身体が震えて、涙が浮かんできた。
「とう、や、」
恐る恐る振り返って、塔矢の顔を仰ぎ見て、オレは背筋が凍る思いをした。
無表情な顔が、オレの視線を捉えて、口元だけで冷たく、嘲るように笑った。塔矢のその冷たい笑
みはゾッとするほど恐ろしくて、そして心が凍りつくほど綺麗だった。
あの時の塔矢の顔をオレは今でも忘れられない。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル