無題 第2部 30


(30)
さっきまで涙に濡れていた目の底が、暗く光っている。黒い、熱い、炎のようだ、と緒方は思った。
この瞳だ。この深い瞳の光に、オレはやられたんだ。緒方はそう思った。
緒方の視線がひるんだのを感じ取ってか、アキラの瞳の色が変わる。燃え上がる炎のように
緒方を睨んでいた瞳がゆっくりと変化して、縋るような、助けを求めるような色に変わっていく。
―この、悪魔め…!
緒方は心の中で叫んだ。
どの道、最初から勝負は決まっていたのだ。
この瞳に逆らうことなどできない。
顎に手をかけ、顔を引き寄せる。そのまま緒方を凝視し続ける瞳にまた挑戦的な色が宿る。
その色に気付いて、至近距離で緒方は動きを止めた。
だが、アキラの唇が誘うように僅かに開かれると、緒方はそれにあっけなく屈した。
緒方の唇がアキラの唇に触れる。緒方の心の迷いを映すように、それは、最初は躊躇いがちに
アキラに触れた。けれど、それでは足りない、と言うようにアキラの唇が動く。腕を緒方の首に
回し、顔を強く押し付けてくる。命令されて緒方の舌がアキラの口腔内に入り込むと、待って
いたかのようにアキラの舌がそれに絡み付く。
がむしゃらに求めてくるアキラを痛ましいと、緒方は思った。何かに餓えていたように緒方の
舌を求めるアキラに、緒方はゆっくりと丁寧に応えた。その緒方の応答にアキラはすぐに白旗
を上げ、後はひたすら緒方の攻撃を受け止めた。
アキラの口から甘い喘ぎ声が漏れ出すと、それが更に緒方の情欲を燃え上がらせた。
注ぎ込まれる緒方の唾液をアキラは飲み込み、それでも溢れた唾液が口の端からこぼれる。
アキラの膝から力が抜け、崩れ落ちそうになるのを、緒方の腕が支えた。



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