Shangri-La 30


(30)
舌を絡めあう湿った音と、熱い吐息がアキラの頭の中でこだまする。
(また、この夢か…)
ひどくリアルなセックスの夢。ここ最近、見る頻度が上がっている。
始めのうちは戸惑い、その誘惑に抗いもしたが、結局いつも負けていた。
誘惑に負け、下着やシーツを汚すばつの悪さを二重に嫌悪するより
夢の中だからと割り切って楽しみ、洗濯の手間を代償にする事を覚えた。

ここで快楽を求めて身体を捩らせよがる姿は、
確かに売女と呼ばれても仕方がないかもしれない。
でも、自分の夢の中でくらい、好きに振る舞いたい。

(今日の相手は…?)
顔を離してそっと目を開くと、綺麗に色の分かれた淡色の前髪が目に入った。
「進藤…」
ヒカルに逢えたことが嬉しく、ここで逢ってしまったことが悲しい。
自分を呼ぶ、わずかに震えた声に誘われ、再びヒカルの唇を求めた。
アキラがシャツの裾から手を滑り込ませ、ヒカルの肌を撫でると
ヒカルはくすぐったがって逃げようとした。
(――どこまでも、リアルだ…)
ヒカルは上半身への愛撫が苦手だった。アキラがこれまで試した範囲だと
一度達するまでは、くすぐったさの方が強いようだった。
(ボクの夢なのに…うまくいかないな)



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