Shangri-La第2章 30
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アキラが目を覚ますと、隣に緒方の場所はあったものの、姿はなかった。
ベッドを降りて、脱いであったバスローブを羽織って
リビングへ向かうと、コーヒーの香りが濃く漏れ漂っていた。
「あぁ、おはよう、アキラ君」
キッチンにいる緒方が先に声をかけてきた。
「あ、おは……」
声が思うように出ず、渇いた喉でせき込んだ。
「声が嗄れたか…まぁ、仕方ないか。それより、着替えてきなさい」
緒方の指した先、ソファの上に、昨晩洗濯機に放り込んでおいた服が
きちんとアイロンまで掛けられて、畳まれていた。
それを持って一旦寝室に向かい、着替えて戻ると
テーブルの上にはフレンチトーストが出されていた。
その他に、水と牛乳とグレープフルーツジュースと、
コンビニのサラダを茹でただけであろう温野菜も添えられている。
この部屋に調理器具があることはもちろんだが、
ここで朝食が出されることにも、またそのメニューにも驚いた。
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