白と黒の宴2 30
(30)
「脱ぎなさい。全部だ。」
ひとしきり激しいキスが済むと緒方はそうアキラに命じた。
「えっ、…ここで…?」
夕刻前のまだ明るい光がブラインドの隙間からリビングの床を照らしている。
緒方の表情は動かない。
抵抗の意志も持てずアキラはそれに従い、その場でセーターを脱ぎ、ズボンを下ろす。
下着すらも全て取り払ってソファーの脇に立ちすくむアキラの裸体を緒方は壁にもたれ掛かった状態で
観察する。それらの事を予想していたように冷静に全身に残された社の刻印を眺める。
「…随分たくさんつけられたものだ。」
半ば呆れるようにしてため息をつくと緒方は煙草を銜え、火を点ける。
「なぜまた彼に抱かれたんだ。…抱かれたかったのか。」
アキラの顔がカアッと赤らみ、キッと緒方に訴えるように睨み返した。
「違います…!言う通りにしないと…」
そこで少し言い淀んだ。緒方に対して口にしていいものか迷った。
だが、続けた。今さら隠しても仕方がない事だ。
「…言う通りにしないと、進藤を抱くと、社に脅されて…仕方なく…」
「従わなければいい。」
「でも…!」
「進藤を社に与えてやればいい。そうすれば君は社から逃れられる。社が進藤に興味を
持っているのなら好都合じゃないか。」
「緒方さん…?」
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