誘惑 第三部 30


(30)
「…塔矢?」
「買出し、ご苦労様。」
そっと伺うような声に、顔を向けて応えた。
「起きてたのか?」
「うん、さっき目が覚めた。」
ほんの少し心配そうに覗き込むヒカルに、アキラは笑いかけてベッドから起き上がろうとした。
「シャワー浴びてくるから、キミは先に適当に食べててくれ……っと、」
「塔矢!?」
立ち上がった次の瞬間、視界がブラックアウトした。
手をついて倒れるのを阻止し、しばらくその体勢で待っていると、耳の中で血液が上がってくる音が
する。身体を支える手を感じてゆっくりと目を開けると、ヒカルが心配そうに見上げていた。
「大丈夫か?」
「…大丈夫だよ。」
そう言って笑い顔を作る。
「シャワー浴びてくるよ。……それとも、キミも一緒に入る?」
「…バカ!」
笑いながらヒカルを小さく小突いて、浴室へ向かう。
平静を装いながら歩いていても、地面が揺れているようだ。さすがに昨夜は無理をしすぎたかもしれ
ない、と少しだけ後悔した。言われなくても、体力が落ちていることくらいは自覚している。だからって、
やめろなんて言われたってやめられもしなかったけどね、とアキラは小さく笑った。



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