平安幻想異聞録-異聞-<水恋鳥> 30
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他に拠り所をなくしヒカルの体が、なんとか自分の姿勢を支えようとして、
秘口が佐為のモノを食いちぎれんばかりに食い締める。
「やだ……! …やだっ!」
だが、そう言いながら、後ろ手に戒められた両の手を、決してほどこうとは
しないのだ。戒める力は、ヒカルがその気になれば簡単に逃れられる程のもので
しかないのにも関わらずだ。
ただ、なすがままに揺さぶられて、金茶の前髪が水滴を散らし跳ね上がのに任せる。
嫌だと叫びながらヒカルの頬を流れ落ちるのが、涙なのか水滴なのか佐為には
判別がつかない。
少年の細い手首を拘束した手で、同時にヒカルを支え、いい所を探るように、
中を掻き回す。ヒカルの体が大きく動くたびに、そこにより体重がかかって、
少年の細い体躯のより深くまで佐為のそれが刺さっていった。
「あぁ、佐為、佐為、佐為!」
ヒカルが、助けを求めるように不安定ながらも懸命に佐為に頭を寄せてきた。
何かを払いのけるように首を振っているその様子に、いつものあれが来たのだと
悟った。過ぎる快楽にヒカルが正気に戻ってしまう一瞬だ。だが、ヒカルは耐えて
飲み込むような表情をしただけで、それ以上は佐為を拒絶しない。
せめて、その時にヒカルの頭をよぎる暗いものを忘れさせてやりたくて、佐為は
この体勢だとちょうど目の高さに来る、ヒカルの胸の淡く色づいた小さいグミの
実のようなそれを、口に含んだ。
頤を大きくそらすようにしてヒカルが啼いた。
口の中の実を嬲りながら佐為が突き上げるたびに、水面が光を反射してキラキラ
揺れて、ヒカルは上を向いたまま喉を鳴らす。
呼吸と淫声の間隔が合わず、息がしずらくて苦しいのだろう。
すでに二人とも体を包む水の冷たさなど感じなくなっていた。お互いが中でこすれ
あう灼熱の感覚だけがすべてだった。
「……もっと、もっとして…佐為…! 壊しちゃっていいからっ」
ヒカルの言葉は、佐為の一番深くて暗い部分に食い入ってくるようだった。
すでに少年の体の最も狭い奥まで届いていた自身で、まるで内蔵を掻き出す
ように強く何度も抉る。入るときは焦らし、引くときは一番敏感な場所を慈悲も
無く強く擦っていく。
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