弄ばれたい御衣黄桜下の翻弄覗き夜話 30
(30)
「そんなの、……気のせいだろ?」
「かもね。自分でも変だと思うけど、でも、俺、塔矢先生と寝るようになってから
強くなったよ」
「お前がセックスする理由は、強くなりたいからなのか?」
「そうだよ」
「塔矢行洋をえらんだのは……」
「先生が一番、神の一手に近いから」
ヒカルの顔にすでに笑みの色はなく、対局中のような真剣な目で門脇を見ている。
その会話の間隙の重さが苦しくて、門脇は話をちゃかした。
「なるほど、強けりゃいいのか。じゃあ、緒方十段や、高永夏や、他の奴でもいい
わけだ。いっそ俺なんてどうだ?」
「それ、誘ってるの?」
「おう」
門脇の言葉に、ヒカルがくっと細いアゴをあげた。こちらを見下ろすように。
「悪いけど――」
そして、夜目にもわかる、鮮やかなほどの冷笑。
「門脇さんじゃ、ぜんぜん役不足」
(…このヤロウ…)
最初の時、初々しい女子高生みたいだと思った自分が、本当に馬鹿に思えた。
まったく。
こいつは女子高生どころか、とんでもない、悪女だ。
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