パッチワーク 30
(30)
整備工場に持って行き最近乗っていなかったことなどを話したりして帰ろうとしたとき敷地の隅に置いてある
黄色い車に気づいた。後ろ側がつぶれようになりフロントガラスにもひびが入っている。まさか。ナンバーを
確認する。彼の車だ。声が震えるのこらえられなかった。「この車どうしたんですか?」工場の人が言うには
街灯の柱が腐食していて脇に停まろうとしていた車に倒れてきたそうだ。「けがは?」そこまでは工場の人も
知らなかった。事故が起きたのは僕が入院した日だった。正直、病院に来てくれなかった彼に拗ねていた、意
地になっていた。だから、彼に連絡を取ろうとしなかった。彼の携帯に電話をした。返ってきたのは「この電
話は現在使用を停止しています御用の方は03-****-****までお掛け直し下さい。」という機械ボイスだっ
た。彼の家、あの女のいる家の電話番号だ。掛けられなかった。明日は彼も手合いがあるはずだ棋院で会える
だろうか。
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