ルームサービス 30


(30)
「終わった?」
「うん」
手をアキラの方へさしだした。
「起こして」
アキラは言われた通りにヒカルの体を起こした。
起き上がったヒカルがアキラの裸の胸に頭をすりつけてくる。
自然にアキラはヒカルの背に手を回した。
浴室の扉が開く音がした。
(犬か・・)
せっかくいい雰囲気なのに、と残念に思ったとき。
ヒカルの体がふいに硬直した。
「やだ・・・・」
「・・・進藤・・・・?」
「や・・・だ、塔矢」
振り返った塔矢は、ヒカルの見開かれた視線の先に、犬の両手が
あるのに気が付いた。
手袋をしている。
(ああ、フィスト用って言っていたなあの手袋)
アキラは納得した。
そもそもアキラは、フィストが何を指すのかわかってなかった。
手紙の内容にフィストとあり、グッズの広告にフィスト用
ラバー手袋と書いてあったから注文してみたのだ。
持ってきた配達人の説明にさすがにアキラも驚き、本当に
使おうと言う気はさすがになかったのだが。
ヒカルはは怯えた口調で、アキラに哀願した。
「や・・め・・てくれ・・よ。頼むから・・死んじゃう・・よ」
「・・時間をかければ大丈夫だって言ってたけど・・」



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