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(30)
ヒカルは肩を震わせ、大きな瞳をめいいっぱい見開いて、こちらを見ている。助けようか、それとも逃げるべきなのか、決め兼ねて混乱しているような表情をしている。そんなヒカルを見るのが辛くて、アキラは、どうしてこうする以外に彼を助けることができなかったのかと男達から陵辱を受けながらも自分を責めていた。
「おいおい。楽しませてくれるんじゃなかったのかぁ!?」
アキラの生白い上半身を、血が滲むほどに噛み痕をつけていた男が、荒い息と共に吼える。
「ハハ。そう焦らないでくださいよ」
男に馬乗りになられ、華奢な体を強張らせつつも、猶も煽るようにそう言い放つアキラ。
いまや、汗で額や頬、細い首筋に髪の毛が貼りついている。細い肩も切れて血が出ている薄い唇も、漆黒の睫毛が縁取るその切れ長の目も、妖しく笑うその口許も、その総てが男の怒張したモノの硬度を上げさせていた。
男はすでに自分が組み敷いているのが少年だという事など頭から消え去っていた。
(31)
「塔矢ッ!」
青ざめたヒカルがアキラに馬乗りになっている男に飛びかかる。だが、もう一人にすぐに取り押さえられる。
「お前はここで一緒に見学してな」
暴れるヒカルをいとも簡単に羽交い締めにすると、耳元でそう囁き、いとおしそうに耳たぶを舐める。
「ははっ!そりゃいい。なぁ、じっくり見ててくれよ?」
動向を見守っていた男も上ずった声で応える。
「お友達の進藤君も塔矢君のイヤラシイかっこ見たいって。じゃあいいとこみせないとなぁ?」
今度はアキラに顔を向け、ハァハァと荒い息をはく。
はたして何人目だろうか、こういう…下卑た人間を目の当たりにしたのは。その狂気に満ちた目が自分の幼い頃の記憶を呼び覚ます――――頭になど留めておきたくない過去。
アキラにはそれがいくつもあった。全て忘れ去ってしまいたい。だがアキラがいくらそう願っても、小さかった自分が受けた衝撃は、消えてくれない。
『みんなには内緒だよ。こんな事がバレたら困るのは塔矢先生だからね…』
荒い息をつき、血走った目をさせて最初の男は呟いた。狭い部屋で服を脱がされ…貫かれた。
ただ泣く事しかできなかった五歳の僕。それから幾度となく似たような体験をした。
凌辱を、されるがままに受け入れていたそんな僕が変わったのは、進藤と出会ってからだ。
彼に恥じない打ち手に…人物になりたくて。
なのに…
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