Shangri-La 31
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ヒカルは、唖然としていた。
今のアキラは、寝ぼけているのかもしれないとはいえ、随分情熱的だ。
その見たこともない激しさを、飢えてんなぁ、と他人事のように思った。
「塔矢…?」
やっと唇を開放され、どうした?と聞こうとした瞬間にまた塞がれる。
ほんとコイツ、キス好きだよなぁ、と思っていると、
アキラの手が脇腹の辺りに伸びてきた。
くすぐったさに身を捩ると諦めたようで、下半身を擦り付けてくる。
オレって、もしかして今、塔矢に襲われてる…?
まさか、アキラに襲われるとは思ってもいなかった。
ヒカルの知っているアキラは、ひどく甘えたがりの恥ずかしがりで、
それが普段の凛とした雰囲気とは相反して、可愛いなと思うのに
今のアキラに、そんな様子は欠片もない。
実際、アキラの中には沢山のアキラがいて、場所や状況に応じて
器用に使い分けていることは知っている。
でも、ヒカルの知っているどのアキラも、今のアキラとは違う。
自分しか知らないアキラが存在することに優越感を感じていたが
逆に考えれば、自分が知らないアキラも居るのかもしれない。
しかも、結構沢山居たりするのかも…。
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