Shangri-La第2章 31
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子供の頃、一時ハマったフレンチトーストと温野菜の組合せ。
一緒にいることが多かった緒方に、作ってとねだったが
料理の経験のない緒方はそれが出来ず、結局母に教わって作っていた。
台所に立つエプロン姿の緒方は、慣れない作業に懸命だった所為か
隣に立つ母と比べると酷く不格好だった。
その後入門した芦原が、自宅の台所で慣れた手つきで
料理をするようになるまで、男性が台所に立つのは
あまり格好良くない事なんだと、アキラは固く信じていた。
「どうしたんですか?緒方さん、ここで朝ご飯なんて
今まで一度も作ったこと、なかったじゃありませんか」
「――食事が済んだら家まで送ろう。
それから……、塩で良かったんだよな?」
アキラの問い掛けには答えないまま、緒方は
手にしたコーヒーカップで、テーブルの上のソルトミルを指した。
――確かに、おやつで食べるときは砂糖だったし
朝食の時は塩を振って食べていた。
「はい……それじゃあ、いただきます」
マイブームが去って以来、食べていなかったフレンチトーストは
子供の頃と変わらない、懐かしい味だった。
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